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魔王に直々に滅ぼされた彼女はゾンビ化して世界を救うそうです
第1章『−−彼女が人に何をした』
第1話『小さな魔物』
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漏らして、慌てて口を塞ぐ。

「なんでまた魔族一匹にこんな大金を……」

「何せ町の衛兵隊の精鋭を全部送り込んでも返り討ちだ。今回も何人か送り込んでいるそうだが、正直アテにならん。お前だけが頼りだ、頼むぜ」

 どうやら本気のようで、その目は真剣そのもの。
 依頼されたからには、断る選択肢は無い。

「ん……まぁ了解。引き受けたよ」

 昼食の代金をテーブルに叩きつけ、荷物を担ぎ直す。依頼書を無造作にポーチに押し込み、背に差した剣を確認する。異常は無し。立ち上がり、酒場を出ようと

「……あ、そうそう−−」

 不意にデルアの声が届き、足を止めて振り返る。
 思い出した様に彼が手を打つと、苦笑しつつ、その事実を口にした。

「その死徒、見た目可愛らしい女の子だから、覚悟はしとけよ」

「滅茶苦茶やり辛いわっ!早く言えよっ!?」








 ◇ ◇ ◇







 大国ヴァリア。
 それこそが現在ジークが滞在する国の名であり、数多の自然を有する世界でも有数の大規模領土保有国である。
 そんな中に存在する数多の町の一つ、ヴァリアゾード。
 自然が豊富なヴァリアの中では比較的開拓が進んでいる町であり、今でも上層の貴族は更なる権力を掴み取るために開墾を進めている。

 今回もその類だったそうだが、生憎と開墾予定だった森に、死徒が住み着いていた。

 この辺りでは死徒は珍しく、比較的知名度は低い。が、それでも数多くの傭兵が雇われているこの街では直ぐに討伐隊が編成された。

 −−結果は、意外にも惨敗。

 死徒といえば、魔族の中でも最弱の部類だ。それでも、ただの人間と比べれば強いのは明白だが、訓練された傭兵部隊を返り討ちにする程の力は無い。
 というか、実際それ程の力は無かった。

 問題はその硬さ。本来、死徒というものは死後の人間の肉体に怨霊が宿り、思考回路も伴わず、ただひたすら人間を襲う魔族。その性質上、死徒の肉体は非常に脆いのだ。

 それがどうだろう。剣を振り下ろせば刃が砕け、魔法を撃ち込めばその手一つで払い退ける。明らかに、死徒が持っていい耐久性では無い。
 困惑した傭兵部隊は雇い主の貴族達にその旨を報告。貴族達はそれらを考慮し、町長に協力を申請した。

 その結果こそがジークであり、《神殺し》なる存在によって鍛え上げられた、対魔傭兵(リ・メイカー)と呼ばれる傭兵団である。

『新人類』『神族の血筋』『魔狩り』などと呼び名は多々あれど、その本質はただの人間であり、その強さは《神殺し》の徹底された訓練故の成果である。
 その過程にて魔族を何体も屠らなければ対魔傭兵にはなれず、逆にそれを成してこその対魔傭兵なのだ。

 −−が、今
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