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藤崎京之介怪異譚
last case.「永遠の想い」
X 5.11.AM5:37
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ありますので、話はあちらで…。」
 プフォルツ警部は俺達が何をしに来たのか分かっている様で、一旦現場から離れた場所へと移動し、そこに張ってあるテントに入って俺達に椅子をすすめた。
 俺達が腰掛けたことを確認すると、警部は徐に口を開いた。
「皆様…あのことで来られたのですよね?」
「そうじゃ。これ以上、後手に回る訳には行かんからの。」
 プフォルツ警部の問いに、アウグスト伯父が答えた。そのため警部は表情を固くし、アウグスト伯父を見据えて言った。
「このままの状況では、最早事件は止まらない。これまでのことで、一体警察の何が役に立ったと言うんでしょう?人間の正義など、所詮はただのままごと…。あの巨大な力の前で、我々は成す術などありません。もう…貴殿方に頼る他に道は無いと思っています。」
「それは最初から分かっておったことじゃ。」
 力なく言ったプフォルツ警部に、アウグスト伯父は静かに言った。それに対し、こんどは宣仁叔父が口を開いた。
「しかし兄上。この状況、些かまずいのでは?」
「そうじゃのぅ…。ここが落ちたとなれば、他も時間の問題じゃ。このまま静観しておっては、直ぐに他にも犠牲が出よう。」
 アウグスト伯父は宣仁叔父にそう言うや、直ぐに「京之介。」と俺の名を呼んだため、俺は「はい。」と返答した。するとアウグスト伯父はこちらに向き直り、俺に指示を出した。
「お前は直ぐに聖ルカ修道院へ向かうのじゃ。」
「聖ルカ修道院…ですか?」
 俺は初めて聞く名前に困惑した。この名前は古文書にも無かったため、それがあったこと自体を知らなかったのだ。
「メスターラー君が場所を知っとるから、このまま二人で向かうのじゃ。もう…手遅れかも知れんがのぅ…。」
「手遅れ…?」
 アウグスト伯父はそれに答えることなくメスターラー氏を呼び、俺は彼と共にそこへ向かうことになったのだった。
 メスターラー氏によると、聖ルカ修道院はこの地方の端にある森の中へあり、ここから二時間以上掛かるという。聖マタイ教会から見れば反対側の外れにあるため、幾つかの町を通らなくてはならない。
 俺とメスターラー氏は車でそこへ向かったが、俺は何故か胸騒ぎがした。さっきアウグスト伯父が「手遅れかも知れん」と言っていたこともあるが、それが確信に変わった…とでも言えば良いのだろうか…?
「どうした?気分でも悪いか?」
「いえ、大丈夫です。」
 運転していたメスターラー氏が心配そうに聞いてきたため、俺は自分の思いを閉じ込めた。ここで何を言おうと、そこに着くまではどうしようもないのだ。
 俺達は休憩する間も惜しんでそこへ来た。とは言っても、そこは未だ森の入り口だ。メスターラー氏が言うには、この入り口からは徒歩でなくてはならないそうだ。
 そこからは十分程だそうだが、数分歩いた時には、
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