暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府の床屋
番外編 〜夜戦トーナメント〜
お姫様はハル
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『ハルは大至急執務室に来てくれ。繰り返す……』

 午前中の営業が終わって午後の開店までの間の休憩中、一人で居住スペースでごろんごろんして遊んでいたら、こんな緊迫感に溢れた提督さんからの放送が鎮守府に鳴り響いた。

「なんだなんた?」

 はて……何かマズいことでもやらかしたか? ひょっとしたら金の計算が合わないとか提督さんが時々俺にくれる食い物のちょろまかしが上層部にバレたとか……? まぁここでうだうだ考えていても仕方ない。不安を抱えながら執務室に向かう。

 執務室に向かう途中に気付いたのだが、鎮守府内に誰もいない。いつもなら昼寝ポイントを通れば鼻の頭にちょうちょが停まっている加古が居眠りしているし、元気いっぱいの暁ちゃんとビス子が走り回っているんだが……今日の鎮守府は水を打ったように静かで、聞こえてくるのは波の音ぐらいだ。

 ついでに言うと、いつもならだいたいこの時間には店に来て霧吹きで店内に過剰に湿気を供給している妖怪アホ毛女すら姿を見せていない。一体何があったというのか……ひょっとしてこの静まり返った鎮守府内と何か関係があるのか……

「とんとん。提督さん。ハルです。着ましたよー」
『来たか。入ってくれ……』

 執務室のドアをノックし、中にいるであろう提督さんに声をかける。心持ち声に緊張感が感じられるのは、多分俺の気のせいではないだろう。

 執務室のドアを開ける。

「あ、来たクマね」
「やっと来たわねハル……」
「待ちわびたわよ! ぷんすか!!」

 鎮守府内が静まり返っている理由がよく分かった。艦娘は全員、この執務室にそろっていた。彼女たちは自身の席に座る提督さんを囲むように立っていて、表情は皆一様に険しい。……隼鷹と北上以外は。

「それじゃまるで私が間抜けみたいじゃん」
「だってお前、実際いつもの緊張感ゼロな表情じゃんか」
「来たかハル……」

 どっかの特務機関の司令のようなポーズで机に肘をつき、実に険しい顔をしている提督さん。こんなに苦悩した表情を浮かべる提督さんも珍しいな……

「何かあったんすか?」
「ああ……」

 提督さんが額に冷や汗をたらしながら説明してくれた所によると……本日、暁ちゃんとビス子の両名によって、ある上申書が提出されたらしい。

「はぁ……上申書ですか」
「ああ。読んでみるか?」
「いいんですか?」
「いいよ。別に機密ってほどではないしな……

 そう言いながら、提督さんは一枚の書類を俺に手渡してくれた。『上申書』と言うからには正式な書類なんだろうが……

 その自称『上申書』には、こんなことが書いてあった。


上申しょ
最近、かんむすのみんなはたるんでると思います。
このままたるんでいては、一人まえのレデぃー
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