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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章始節 奇縁のプレリュード  2023/11
4話 燻る苦悩
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のだろう。この浮遊城に閉じ込められた者達が今日まで検証と実践を重ね、成果を得てきた結果だ。裏切りはしない筈だ。それを知っているからこそグリセルダさんも模範的な剣士装備を身に纏っている。
 それに対しての俺は、防具という枠組に含めるべきかも定かではない布装備。それも盾を排したともなれば、正気の沙汰には映らないことだろう。不安に思われても無理はない。


「この手の布装備は防御力が低い代わりにSTRやAGIに補正が付与されていることが多いし、そもそも軽いから動き易い。だからこそ、攻撃を盾で受けるよりは避けたり凌いだりした方が利点を追求出来ると俺は考えている」
「なんだか火中の栗を拾いに行ってるような気もするけど、それで戦闘が捗るものかしら?」
「基本的にPTで行動しているから、俺はこのままで問題はない。むしろ、空振りや遅延(ディレイ)で足止めするのが俺の目的だ。仕留めるのは相棒(ダメージディーラー)に任せてある」


 相手の攻撃に対して回避や相殺を以て無効化するからこそ、本来であればダメージなど気にならないものだが、いざ躱しきれなければ即ち死に直結することも容易に想像できる。だが、ヒヨリの一撃離脱特化ビルドを優先させ、それをサポートする為に俺が前線を撹乱させることで形成された役割分担は結果として戦闘を極めて早期に片付けることとなった。一見するとかなりリスキーで、戦闘における決定力が欠如している為に誰もやりたがらない。ヒヨリの火力がなければ、こんな酔狂を好んでするわけがない。


「その相棒さんを信用してるのね」
「リアルでも付き合いが長いからな」


 とはいえ、グリセルダさんの言う通り、ヒヨリに対する信頼がなければ成立し得ないことだっただろう。懇意にしているとはいえ、他のギルドに腕を買われるほどにまで成長したのだ。こんな場所にあって不謹慎な物言いだが、喜ばしい事だと思う。


「じゃあ、その子とはずっとお友達なの?」
「まあ、そんなところだな。家も近所だ」
「もしかして、女の子だったりする?」
「………そういうのも分かるんだな」
「女の勘よ。男の子には分からないでしょうけどね」
「そりゃ便利だな」
「ええ、とっても便利よ………でも、知りたくないことまで教えてくれるから、無い方が助かる時もあるわね」


 思わしげに溜息をつくグリセルダさんには、どこか寂しいものを感じさせられる。
 その雰囲気は不思議と、俺が設けた線引きを曖昧なものにするに足る力があったように思えた。放っておけないような、後になって公開してしまうのではないかという強迫観念めいた不安は、それだけで俺が定めたグリセルダさんとの保つべき距離感を容易く踏み越えさせてしまった。


「余計な事まで知って後悔したような言い草だな」
「…
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