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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第1章始節 奇縁のプレリュード  2023/11
4話 燻る苦悩
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ったからだ。口先だけの優しさじゃなかったからこそ、俺は涙を零してしまった。造り物の演技じゃなかったからこそ、どこか温かいものを感じられた。そう思えたのは、ヒヨリが底抜けに優しかったからだ。形だけの優しさは、感情のない冷たい行為は、それらには決して血液は通わない。無機質で機械的な厚意など、言葉にしてみれば違和感しかないが、まさしくその感覚が全てを物語っているのではないだろうか。畢竟、形だけの優しさを人は《偽善》などと言うのだろう。


「要は考え過ぎだ。せっかく演技をやめたんだから、あとは認知してもらうだけだろう。時間は掛かるかも知れないけれどさ」
「……自分のことじゃないからって、好き勝手に言い過ぎなんじゃないかしら?」
「他人事だからな。一歩引いて俯瞰して、見えたことを率直に言った結果だ。だからこそ意外な意見が出て、どうにかなったりするんだと思う。もちろん、情報を鵜呑みにすることだけは避けてほしいところだけど」


 俺みたいな若輩の意見では(たか)が知れているだろうけれど、それでも情報を取捨選択する権利を有しているのは聞き手であるグリセルダさんだ。訝しむのは結構。その意気で情報を精査してもらいたい。自分で言うと身も蓋もないが、なんたって中学生相当の人生観で語られたものなのだから。


「でも、そうね。悩むより行動した方が私らしいのかもね!」
「それは、俺にはよく分からないな。無責任なことを言いたくない」
「………心配しなくても貴方は軽率発言たくさんしてるわよ。そこは自信を持って肯定するものでしょう」


 苦笑を漏らすグリセルダさんに窘められながら、なんとも言えない空気で休憩は幕を閉じた。
 ただ、強いて言うならば、グリセルダさんについて知れただけでも有意義だったのだろうか。

 ………ともあれ、ダンジョンもいよいよ最奥を残すのみのようだ。
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