第一部北領戦役
第十七話 俘虜の事情と元帥の事情
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これといって気を引くものは無いわ」
詰まらなそうに言う姫自身がその詰まらない男の特別扱いを命じた事を知っているメレンティンは無言で肩をすくめる。
――やれやれ、もう少し素直さを身につける様に御養育するべきだったかな?
「いえ、面白い男でしたよ。中々話が合いました。」
「あら、それじゃあ相当な軽口男なのね。」
微笑みながら姫はかつての侍従武官をからかう。
「姫、何と心無きお言葉を、ああ、爺は哀しく御座います。」
白々しく肩を落とす元御付武官にユーリアもくすくすと笑う。
「――それで、貴男は随分その男を評価した様ね」
「はい、私の部下にいたら間違いなく引き立てています。
正直な話、〈大協約〉が無かったら首を刎ねたい程です」
「あら、随分と剣呑ね。」
果断ではあっても穏健な性格のメレンティンが発した予想外の言葉にユーリア姫は目を見開いた。
「あの男は、ショウケ――〈皇国〉の有力な軍閥貴族の出です。
国に戻った後で、事と次第では厄介な相手になります」
「それ程切れるの?」
ユーリアが興味深そうに耳を傾ける
「誘導尋問を仕掛けたのですが、のらりくらりと躱されまして煙にまいて逃げ切られてしまいました。 いやはや大したものです」
メレンティンが評価したのは軍人というより政治屋としての手腕である。
もっとも、その二つは極めて近しいものであるが。
「そう・・・貴方がそこまで言う男、私も会ってみましょう、興味が湧いたわ。」
メレンティンも好奇心が疼いた。
――互いが互いを如何に評するか、興味深いが・・・。
「姫、その前にこの書類と報告の処理を先にお願い致します。」
厚みのある書類束を目の前に置くと美貌の姫が悲しげな視線を向けた。勿論、忠良たる参謀長は無視をする。
如何に帝族にして元帥と云えど――いや、だからこそ面倒とは何時も付き纏う物であるのだから。
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