暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第3章 黄昏のノクターン  2022/12
34話 造り物の心
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「ふむ、順調だ」


 満足げなコルネリオは一言だけ残し、ゴンドラから降りると側近の前まで歩み出る。


「ブルーノ、ロレッキオ。首尾は?」
「総勢四十二名、準備を終え待機中です」
「それと、彼等の報告書を拝見いたしましたが、どうやら相手は水上における戦力を保有しているようです。如何なさいますか?」
「ああ、それなら――――」


 側近の両名と作戦会議を始めてしまったコルネリオに取り残され、俺達は蚊帳の外に追いやられる。この会話に横槍を入れて、クエスト進行に何らかの支障が生じても困るので、空き時間として利用しつつポーションの分配や装備の確認を始めることにする。


「リンさん、お話があるのですが………」
「………フォールンについてか?」


 神妙な面持ちで話を持ち出したティルネルに問うと、静かに首肯される。

 俺は彼女の表情や声色から感情の機微を読み取れるほど細やかな性格をしていない。そういう役回りはヒヨリやクーネの専売特許というものだ。
 果たして、俺に持ち掛けて良いような相談であるかは内容如何によるが、少なくとも全体のイニシアチブを取るならばクーネの方が有利であろうし、一番身近にいるヒヨリに話しさえすれば俺には拒否する意思はなくなるだろうに。それでも敢えて俺に話を持ち掛けるというのであれば、それを無下にするつもりは毛頭ない。彼女もまた、俺からすればかけがえのない仲間なのだから。


「コルネリオさん達は、このままフォールンエルフ達の潜伏先に強襲を仕掛けるでしょうか」
「間違いなく戦闘は避けられないだろうが………大丈夫なのか?」


 大丈夫なのか、という質問はあまりにも抽象的に過ぎる。通常のNPCであれば首を傾げてしまうような難問でさえも、ティルネルは頷いて返す。


「はい。私は《迷い霧の森》にて森エルフの部隊を数度に渡って襲撃しています。ですから、戦うことについての忌避感はないんです」


 手の掛かる姉の命も掛かってますから、と冗談混じりに言葉を締めくくるティルネルの表情は、言葉に反して暗い。こうなれば、さしもの俺でも心情を察することは可能だ。


「………フォールンエルフに、何かあったのか?」
「やっぱり、話さなきゃ………ですよね」


 困ったように笑うティルネルを見る俺の表情は、笑えていないと思う。
 いっそ訝しむような表情でいるかもしれない。だが、その本心を聞き出さねば、きっと俺は後悔する。認識を拒絶された、稚拙な我儘で否定された予測が声高に鳴らす警鐘を脳裏に押しやりつつ、ティルネルの言葉を待つ。
 時間にしてみれば半秒もないような空白でさえ、緊張とも表現出来そうな重苦しい内情は体感時間を大きく引き伸ばしてみせた。ティルネルの意思を聞かなくて
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