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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第3章 黄昏のノクターン  2022/12
33話 漆黒の猛禽
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十層あたりの魔物が振るう武器を真似て造ったと言われているのだが、若い頃は柳葉刀ばかり使っていた所為か、ひどく手に馴染んでね。これに出会ってからは《お守り》として、有事の際に持ち歩くようにしているのさ」


 しかして持ち主は一切として気にしていないかのように振舞うのだから、こちらも追及が出来ない。ティルネルに対する疑問とは驚愕の度合いこそ大きな差があるものの、そういうものだと割り切るしかない。
 それよりも、クエストログの更新が為されたらしく、もはや親しみさえ覚えるようなサウンドエフェクトを聞き取るとコルネリオは刀を腰のホルダーに差し、机の引き出しから取り出した黒革の手袋を身に付けて、身支度を手早く整える。


「では、これより道案内を頼みに行くとしよう。取引を終えたこのタイミングであれば、彼等は我々を警戒する理由はなくなっている。今ならば話を付けやすいというものだ………なに、簡単な散歩だと思ってくれればいいさ。私も執務室に籠ってばかりだと息が詰まってしまうからね」


 全容をぼかしたような言い回しに女性陣が揃って疑問符を浮かべる。クエストログについても、コルネリオと行動を共にして、その成り行きに任せるしかないような文面であることから、基本的には知らなくてもストーリーはオートで進むようになっているらしく、然したる問題はないのだが、これから繰り広げられる光景を予想しつつ腹を括ることとする。

 ………そして、コルネリオがPTのイベントMob枠に収まる。視界の端に増えたHPバーと共に表記された固有名は【Cornelio The Lobian Syndicate Boss】となっており、フロアボスや隠しボスと一部例外と同様の《定冠詞》を含むネーミングであった。もしかすると、どこかでルートを間違えたり、クエストを失敗してしまったりすると、その名前通りに彼と戦う羽目になっていた可能性さえ考えられる。空恐ろしい話だ。


「………リン君、コルネリオさんのレベルって………」
「気付いたか」


 隣から掛けられたクーネの声に、俺もただ頷いて返す他ない。なにを隠そう、この男のレベルは三十という破格の数字だったのだから。一瞬、年齢ではないかと疑ってしまったほどだ。こんな男と刃を交える可能性さえあったのだと思うと、背筋が凍る思いだ。空恐ろしいものである。


「そろそろ出よう。話は早いうちに纏めた方がいい」
「ひ、ひゃい!? がんばります!?」


 出発を促すコルネリオの声に、最も近くに居たクーネが声を裏返らせる。別にその程度でカラーカーソルが赤くなることもないだろうし、そもそも圏内だからどうなるわけでもないのだが、あからさまな高レベルを見せつけられるというのは、やはり少なからず警戒をしてしまうものなのだろうか。



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