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夕立
6部分:第六章
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第六章

「できたわよ」
「あっ、やっぱり」
「そうなんですか」
「相手が誰かは内緒だけれどね」
「えっ、内緒なんですか」
「それはちょっと酷いんじゃ」
「じゃあヒントを出すわ」
 何気に話に乗っている先輩だった。話をする間もその手にはオーダーとペンがある。そしてお盆の上に他のものもだ。
「同じクラスの子よ」
「ああ、じゃあ同じ学校の同級生の人とですか」
「お付き合いしてるんですね」
「そういうこと。楽しくやってるわ」
 先輩は話しながら口元を微かに綻ばさせている。
「充実してるわよ」
「それはどうも」
「おめでとうございます」
「それでね」
 ここまで話してであった。先輩は話を変えてきた。
「ここに来た理由は」
「はい、何ですか?」
「それで」
「はい、これ」
 そのお盆からだ。あるものを二人のいるテーブルの上に置いてきたのだ。それは。
 紅茶だった。二つのアイスティーである。
「どうぞ」
「あれっ、お茶ですか」
「フリードリンクなのにですか」
「フリードリンクでも持って来たのよ」
 そうだというのである。
「あんた達暫く食べるのばっかりだったでしょ」
「ええ、まあ」
「そういえば」
 言われて気付く二人であった。実際に二人の前は皿がうず高く積まれている。それだけ食べたという何よりの証である。
「ケーキにアイスにフルーツに」
「クレープにフォンデュに」
「だからよ。飲み物も飲んだ方がいいわよ」
 こう話す先輩だった。
「だからよ。どうぞ」
「有り難うございます」
「それじゃあ」
 二人も先輩の言葉に頷いてだ。その紅茶を飲むのだった。そうしてさらに食べてそれが一段落した時だ。窓の外を見ると。
「あっ、やっと」
「そうね。遂にね」
 二人はその窓の外を見て笑顔になった。
「止んだね」
「そうね。それじゃあね」
 雨が止んだ。そして食べることも一段落した。するとだった。
「もう出ようか」
「そうね」
「それじゃあね」
 こうしてであった。カウンターに向かう。
 そこにはやはり先輩がいた。その先輩が言うのであった。
「まだ帰ったら駄目よ」
「えっ、何でですか?」
「雨ですか?」
「持ち物チェックよ」
 それでだというのだ。
「それでなのよ」
「それでって」
「私達別に取ったりとかは」
「忘れ物よ」
「忘れ物!?」
「忘れ物って」
 そう言われてだ。二人はまずはそれぞれいぶかしんだ。しかしであった。
 ここでだ。先輩は二人の手を見ながら言ってきた。
「鞄は?」
「あっ、そういえば」
「忘れてました」
 二人も言われてそれに気付く。
「それは」
「席に置いたままです」
「早く取ってきなさい」
 先輩はクールな声で述べる。
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