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ソードアート・オンライン -旋律の奏者-
アインクラッド編
平穏な日々
紅色との日 03
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て褒められた行為ではないことは承知しているけど、僕もアスナさんも冷静ではなかった。

 「よう、早かったな」

 しかし、当の本人である《黒の剣士》様は飄々と、あるいは不敵に笑って僕たちを出迎えた。

 「ねえ、アスナさん」
 「……なんでしょう?」
 「この黒いの、とりあえず1発ぶん殴っていいかな?」
 「奇遇ですね。 私もそうしようと思っていたところです」

 それにイラっとしたのは僕だけではないらしい。 見ればアスナさんは腰のレイピアを既に抜剣していて(いつの間に??)、キリトにその切っ先を向けている。 どうやらアスナさんはぶん殴るどころではなく、自慢のレイピアでぶっ刺す(しかもソードスキルを使うつもりらしく、薄紫のライトエフェクトが灯る)予定のようで、かく言う僕も体術スキルでぶん殴る気満々だ。

 「ちょっ、落ち着け! 落ち着けって!」
 「問答ーー」
 「ーー無用!」

 ことここに至ってようやく事態を察したキリトが両手を前に突き出して制止を促すけど、残念ながらもう遅い。 まずはアスナさんのレイピアがキリトの顔面に向けて飛び、それから僕の左拳が同じく顔面に向かう。
 もちろんここは圏内なのでキリトに届く前にアンチクリミナルコードの障壁に阻まれる。 けれど、攻略組でもトップクラスのスピードを誇るアスナさんと僕の攻撃は、キリトに多大なノックバックを課し、壁まですっ飛ばした。

 キリトにお仕置きしてスッとしたのか、楽しそうに笑うアスナさんとハイタッチをしてからキリトを見下ろす。

 「キリト君」
 「は、はい……」
 「とりあえず正座しようか?」
 「はい、わかりました」

 凄くいい笑顔のアスナさんから立ち上る阿修羅の如きオーラに屈し、キリトは素早く正座した。
 とは言え、それを滑稽だとかチキンだとは笑えない。 僕だってこんな笑顔のアスナさんを前にしたら、それがたとえどんな状況でも正座してしまいそうだ。

 うん。 端的に言って怖い。

 「どう言うことか説明してもらえるかしら?」
 「あ、久し振りのツンモードだーなんでもありませーん」
 「……それで?」

 茶化しに入った僕を絶対零度の一瞥(小動物なら殺せるレベルの鋭さだ)で黙らせて、アスナさんはキリトに向き直った。

 「えっと、ヒースクリフの奴に呼び出されて、行ってみたらKoBに入らないかって」
 「団長がキリト君に興味があることは知っていたわ。 問題はその先よ。 どうして団長とキリト君がデュエルすることになるって言うの?」
 「あー、いや、もちろん断ったんだけど、そしたら『剣で決めようではないか』って。 なんでかあいつはノリノリだし、俺もあいつの強さは気になってたし、それで……」
 「それで挑発に乗った、と。 
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