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とある星の力を使いし者
第158話
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バルドに対してではない。
自分に対してだ。

「君の方も結構重症だ。
 両手両足を貫いた穴と右胸に空いた穴。
 本来なら死んでもおかしくない傷だけどね。
 あまり使いたくはなかったが、少し特殊な治療方法をさせて貰ったよ。」

自分の右手の掌を見る。
穴が空いている感触はしない。
どんな治療をしたのかは分からないが、完全ではないが穴が塞がったようだ。

「看護婦の一人がストレッチャーを入り口に急いで運ぶ所を見てね。
 追い駆けてみると君が病院の玄関で倒れていたんだよ。
 そのまま緊急オペをして今に至る訳だ。」

彼はカルテを見ながら答える。
時間はあれから数時間しか立っていないらしい。
バルドに頭を浸食された時以降の記憶がない。
だが、そんな事はもうどうでも良かった。
麻生の頭には守れなかった、という事実しかない。
支えている桔梗から離れてフラフラ、とおぼつかない足取りで病室を出て行く。

「どこに行くの?」

桔梗が後ろから声をかける。
それを無視して麻生は歩く。
桔梗は追いかけて無理やりにでも病室に戻そうとしたが冥土帰し(ヘブンキャンセラー)が止める。

「一人にしてあげなさい。」

「でも・・・・」

「彼なら大丈夫だ。」

何を根拠にしているのか彼は力強く頷いた。
桔梗はそれを見て麻生の方に視線を移す。
彼はゆっくりと階段を登って行って見えなくなった。





数十分かけて麻生は屋上に辿り着いた。
未だに雨は降っていた。
傘も差さずに麻生は雨の中屋上を歩いて行く。
落下防止用の腰の位置まである鉄柵の所まで歩く。
点滴スタンドから手を放して、その鉄柵を掴む。

「くっそぉぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

喉の奥から獣のような雄叫びを言い放つ。
その叫びは夜の学園都市に木霊していった。
そして、強く鉄柵を叩く。
叩いた衝撃で激痛が走ったがそれでも何度も叩く。
掌の穴ができた傷口が開いたのか包帯が血で滲んでくるが何度も叩く。
まるで自分に罰を与えているようだった。
何十回叩いただろうか。
激しく息を切らしながら麻生は雨雲を強く睨みつける。

「ダゴン秘密教団。」

自分の敵がどれほど強大なのか身をもって知った。
何も分かっていない。
この星の事も。
自分自身も。
今まで少し気にしている程度だった問題が大きくなってきた。
知らなければならない。
この力を与えられた意味。
自分の事を星の守護者と呼ばれる意味。
何より強くならなければならない。
大切な人を守る為に。
麻生は桔梗が屋上に上がってくるまでずっと雨の中屋上で佇んでいた。






麻生の容体を纏めたカルテに健診結果を書き記
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