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おぢばにおかえり
第十九話 夏ですその十二

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「それで一人じゃやっぱり」
「何か凄くうらやましいです」
 私はついつい本音を出してしまいました。
「先輩ってお奇麗ですから」
「私はそんなに」
「一年の間でも話題ですよ」
「男の子にかしら」
「高井先輩といつも一緒におられるじゃないですか」
「ええ、そうだけれど」
 先輩は私の言葉に頷いてからまた述べられます。
「潤とは一年の時から同じクラスなのよね」
「一年の頃からなんですか」
 今は同じクラスなのは知っていますけれど。それでも三年の間同じだったなんて。
「そうなの。だから仲がよくなってね」
「それのせいで余計に有名になってるんですよ」
「余計に?」
「はい、美人カップルだって」
 こう言っちゃうと同性愛っぽいですけれど。ただ一つ気になることは同性愛って天理教ではどうなんでしょうか。日本では元々あまり問題視されていませんけれど。
「本気で好きになってる子だっているみたいですよ」
「私になの」
 けれどこう言われると暗い顔になられる先輩でした。
「私なんか好きになっても」
「そんな、先輩とてもいい人ですよ」
 奇麗なだけじゃないです。こんないい方いないんですけれど。
「それでどうして」
「私、色々と人を傷つけてきたから」
 さらに暗い顔になられました。それを見ていると私も暗い気持ちになります。
「だから」
「そうなんですか」
「ええ。私なんか好きになったらよくないわ」
 俯いて言われます。
「その子が本当にいたらそう言ってあげて」
「はあ」
「それでね、ちっち」
 先輩はお話を変えてきました。私もそれに合わせます。
「おぢばがえりの時ね」
「はい」
 言うまでもなくおぢばがえりでも私はおぢばに帰らせてもらいます。実家が教会なので。
「詰所に来て。よかったら」
「行っていいですか?」
「ええ、是非ね」
 今度は明るい顔になられました。それを見て私も明るい顔になります。やっぱり他の人が明るい顔になると自分も明るい顔になります。これも陽気ぐらしでしょうか。
「お菓子用意しておくから」
「それは別に」
「いいのよ。ちっちお菓子好きじゃない」
「いいんですか、本当に」
「だからいいの。それにね」
「はい。それに?」
 何か先輩の語感が変わりました。微妙に、ですけれど。
「誰か来てくれたら寂しくないしね」
「あっ、そうですね」
 確かに。それはあります。
「じゃあ私なんかでよければ」
「来て。楽しくお話しましょう」
「はい。そういえばですね」
「ええ。何かしら」
「先輩の実家なんかも行ってみたいんですけれど」
「それは来年にして」
 こう言われました。
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