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おぢばにおかえり
第十九話 夏ですその十三

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「来年にね」
「来年ですか」
「ええ。今年は受験だから」
 またこのことが話しに出ました。
「だからね」
「わかりました。じゃあ来年に」
 話が決まりました。それと一緒に。
「それに。私もね」
「先輩も!?」
「ちっちのお家に行ってみたくなったわ」
 うわっ、って思いました。こう思ったのは先輩のお言葉からじゃなくて先輩のお顔を見てです。にこりと笑ったそのお顔があんまりにも奇麗で。本当にこのお顔見たら誰でも参っちゃいます。
「いいかしら」
「はい、それは」
 私に異論はありません。
「御願いします」
「じゃあその時にはね」
「それにしても先輩」
 本音を言います。
「何?」
「本当に男の子とか芸能プロダクションには気をつけて下さいね」
「芸能プロダクションって。そんな」
「皆放っておきませんよ」
 下手したら東寮の先輩の何人かをゲットする為に芸能プロがおぢばに来てもって感じです。この長池先輩だけじゃないですから。
「その笑顔だと」
「有り難う。顔は表札だから」
「表札ですね」
「そう、表札よ」
 この言葉もよく言われています。
「やっぱり表札を褒めてもらったら嬉しいわ」
「先輩はいい表札ですね」
「有り難う。ただね」
「ただ?」
「一番いいのはあれなのよ」
 また仰ってこられました。
「あれですか?」
「ええ、そうよ」
 笑顔で私に応えてくれます。本当にお奇麗です。
「心から出るのよ」
「表札もですか」
「そうよ。性格って顔に出るじゃない」
「はい」
 これはわかります。確かに顔に出てきます。
「だから。ちっちも」
「心をしっかりとですね」
「そうよ。わかったわね」
「わかりました。成人します」
 心が成長することをおみちでは『心の成人』といいます。それがおみちを歩く目的の一つと言ってもいいんです。まずはそれなんです。
「これから」
「そうよ。心が一番の表札かもね」
「わかりました」
 笑顔で頷き合います。はじめての高校生活での学期は何だかんだで無事終わりました。今思うと楽しい一時でした。


第十九話   完


                        2008・5・19
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