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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第3章 黄昏のノクターン  2022/12
28話 水都の陰
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俺を伴っての参加というと話は変わってくる。

 現在の前線攻略に参加するプレイヤー達の心境の変化は、昼間のキバオウの態度を見れば少なからず改善されていることが窺える。しかし、それでも俺は他のプレイヤーが心血を注いで推し進めてきた責務から一時とはいえ距離を置いてしまっていた俺に、収まる場所があるようには思えない。
 そればかりか、第一層からボス攻略に参加し続けている前線プレイヤーには、俺に怨嗟や憎悪を抱くプレイヤーだって少なくはないだろう。何しろ彼等の目には、俺が彼等の希望であったディアベルを見捨てたと映ったはずなのだから。

 ………結論として、ボス攻撃を俺と共に参加するというのはデメリットが際立つ。クーネ達には前線攻略における中軸にあってほしい。願わくばギルドとして確立され、より巨大な集団になってくれた方がありがたいというものだが、その第一歩を俺自身で摘んでしまっては元も子もない。
 しかも、それさえ彼女達を案じたものではなく、俺の思惑が多分に関わるものだ。もしかすると、それによって彼女達に不便を押し付ける結果になるのかも知れないし、思うような結果を伴う保証さえない。
 ………だが、俺がここで退いてしまえばクーネ達はボス戦に挑む機会を失ってしまう可能性さえある。それだけは避けたい。メリットやデメリットを推し量る以前に、始まらなければ意味はない。


「………あまり、期待はするなよ?」
「断らないんだね………ありがとう」
「礼なんていい。もとは俺が頼んだんだ」


 我ながら要領を得ない返答の意図を汲んでくれたクーネに一礼されつつ、少し冷めた紅茶を喉に流し込む。そのままカップを置く間もなく、ヒヨリとティルネルが真横に迫ってくる。目を輝かせるヒヨリからは長年の経験としか言い様のない、第六感的な領域で警鐘が打ち鳴らされる。


「………近いぞ」
「私、あの市場行きたい!燐ちゃんも行こう!」
「是非行きましょう。薬の材料が手に入れば、もっとお役に立てます」


 ヒヨリは完全に興味本位かも知れないが、ティルネルの能力を活かせるのであれば、露店のランダム在庫を利用しない手はないだろう。ティルネルの作成するポーションの性能は三層の隠しダンジョンで実証済みだ。店売りのそれよりも効果がしっかりしているので、POTローテにおける手薄な状態での戦線維持も短時間で済むことから、少人数での隠しダンジョン攻略には最早必需品といっても過言ではない。クーネ達の分も用立てて貰えれば尚のこと有難い。


「リン君、行ってみようよ?」
「………そうだな。露店はどうしようもないだろうけど、競り場周辺の店の品揃えくらいは見ておいて損はないだろう」


 ということで、昼から続く大所帯PTは市場へと歩を進めること二分足らずで市場の中心地ま
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