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RSリベリオン・セイヴァ―
第十七話「いつかの記憶」
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休みが終わりに近づく頃には、篠ノ之神社で行われる夏祭りに出向いて出店を見て回った。
「一夏ちゃん! 浴衣着てみたの、どう?」
「うん、とっても可愛いよ!」
手をつなぎ。人ごみにまみれて二人は出店を回り終えると、祭りの目玉である巫女の舞を見る。そこには、装束に着替えた箒が同い年というのに華麗な舞を披露している。いつも虐めてばかりの箒だが、今宵の彼女だけ一夏達には輝いて見えた。
舞も終わり、しばらく静かになると、二人は箒に見つからぬよう神社の裏山にある丘の展望台に向かい、そこから見える打ち上げ花火を見つづけた。ここでの見通しは絶景で、二人は花火が打ち終えるまで体を寄せあいながら夜空を見上げる。
もうすぐ夏休みも終わりを迎える頃。二人は篠ノ之神社へ訪れて互いに願いを交わした。
「また、ここに来れますように……」
「来年も、一夏ちゃんが来てくれますように……」
だが、女の子はもう一つ願い事を頼む。
「……いつか、一夏ちゃんと一緒に暮らせますように」
そして夏休みが終わり、一夏は姉に手を引かれて汽車に乗ることに。ホームには必ず箒がしつこく見送ってくる。しかし、あの女の子はホームにはいない。
しかし、列車が出発して駅を出、近くの土手道の風景にさしかかると、そこから一人の少女が電車と共にかけていく。一夏は、それを見逃さなかった。
「一夏ちゃん!」
元気に手を振りながら土手道を駆ける女の子に答え、一夏も窓を開けて思いっきり彼女に手を振り始める。そうして、少女の姿が見えなくなるまで一夏は手を振るのをやめなかった……
――また、会える……会えるよ!
しかし、この年が彼女とある最後の夏だった。5年に上がると、あの田舎へ行くことはなくなり、姉は親友の手伝いで忙しく、それからの夏休みは自宅でじっと閉じこもっていることがほとんどだった……
また、あの子に会いに行こうと思ったが、度重なる女尊男卑の津波に押し流される一夏は、次第に女性という者に対して敵視を抱き始め、徐々に女の子のことなど忘れてしまっていて、彼女との思い出も、薄れていった。

「……?」
幼いころの思い出から戻ってきた一夏は、目を覚ました。そこは、先ほど寛いでいた河原である。
――夢、か……
自分と、見知らぬ少女との思い出だが、やはり思いだせない。夢だから、夢の中だけの架空の人物だろう。
起き上がり、あくびと共に背伸びをした彼は立ち上がるとバイクを押して河原から出た。
「あとはどこへ行くっかな? ……そうだ、篠ノ之神社にでも行ってみるか?」
ツーリングの無事を祈って参拝にでも行こう。再びバイクのキーをひねり、彼は篠ノ之神社へ向かった。
篠ノ之神社は、この村で一に有名な大社だ。由緒ある有名な神社らしく、年間参拝者がたくさん訪れるとのことだ。
「懐かしいな? 久しぶりに来たぜ…
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