暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
気付く不和の芽、気付かぬ不調
[3/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


 ぞっとする。少女というには余りに妖艶過ぎる。
 敵になったモノを愛しく語る彼女に、二人は恐怖を覚えていた。

 震える手で、朱里は自分の身体を抱き締める。落ちる吐息は熱くて甘い。
 彼女は彼の事が怖ろしくて恐ろしくて……そして何より愛おしい。

「分からないから恐ろしい。分からないから理解したい。教えてくれないあの人は、いつだって自分勝手に進んで行く。
 どうして、自分とは全く違う大徳に仕えていたんでしょう……どうして……偽りの大徳になんてなったんだろう……あなた達には、分かりますか?」

 そっと唇を撫でてみた。いつしか甘いモノを貰えると信じて。
 先に手に入れているだろう親友から……奪い取ると知っていて。

「……分からんな。何が言いたい、諸葛亮?」
「はい、私にもわかりません。でもあなた達があの人を語るから……」

 紅い瞳が燃えていた。視線が紡がれた先、紅い瞳が燃えていた。
 妄執とも呼ぶべき感情の籠ったその瞳を覗き込んだ冥琳の表情は険しく、それでも彼女は視線を外さない。
 朱里は……そっと口を引き裂いた。まるであの龍のように。

「ちょっと意地悪したくなっただけ、ですよ?」

 胸を焦がす炎を抑え切れない。知識のケモノが喚いて吠える。どれだけ願っても会えない。どれだけ願っても側に寄れない。
 彼女の身を焼いているのは嫉妬の炎。
 知ったように話す二人には向けない。ずっとずっと傍に居続けた鳳凰にこそ、彼女の内のケモノは吠えている。

――ねぇ……雛里ちゃんなら……当然対応してくるよね?

 使えるカードは色が違う。切れる状況もよろしくない。それでも勝たなければ何も手に入らない。
 考えて考えて、彼女はこの孫呉を救うことにした。悪龍によって半分以上喰らわれるはずだった大地を救い、先の為にと力を与えた。
 これでいい、これでいい。
 共に居たからこそ分かる敵の能力を見誤らず、全てを整えて挑まなければならない。敵は覇王。それも黒麒麟と鳳凰が味方に付いた最悪の敵。

 今目の前にいる二人の智者ではまだ足りない。朱里はそう思う。
 自分の方が上だなどと傲慢なことは考えていないが、敵がどんなモノかを知っていれば不足分が見えてくる。

――孫呉は致命的な問題を抱えている。それは私達がどうこう出来るようなモノではない。揚州と荊州の衝突はその問題への注意程度にはなったけど……根本的な改善には至らない。

 外から集めた情報と、中に入ってみて分かった情報の二つ。合わせて思考を巡らせば答えが出た。

――軍師周公瑾に対する王や部下達が向ける強い信頼は武器であり、弱点。換えの効かないただ一人の頭脳を失うと、孫呉は大きな選択肢を選ばなければならなくなった時に判断を誤るだろう。
 何より“
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ