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コインの知らせ
3部分:第三章
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けているうえに彼は後ろにいるのでその顔はよくは見えない。面を着ければその視界がかなり制限されるのだ。
「じゃあ頼むぜ」
「ああ」
 そんなやり取りの後で試合場に向かう。場所は卓也の学校の剣道部の体育館なので勝手は知っている。場所は慣れているが肝心の剣道に慣れてはいないのだった。
 その慣れていない剣道をするので正直不安だ。だがそれでも受けたのなら最後までやるつもりだった。それで礼をして相手に対するのだった。
 構えてみる。構え自体は見事なものだと自分でも思う。問題はそれからだがこちらが仕掛けるより前に向こうが向かって来たのだった。
「きえーーーーーっ!!」
「いきなりかよ!」
 相手が面を打って来たのを見て思わず叫ぶ。しかしその叫びが出るとほぼ同時に相手が面を打ち込んで来た。何とか首を右に捻ってかわしたが肩に受けてしまった。
「つう・・・・・・」
 かなり痛い。直撃だった。しかもその痛みに耐えるのも許されず相手は今度は体当たりを仕掛けて来た。だがそれは彼にとっては好機であった。
「おっ、来るのか」
 痛みに耐えながら相手のその動きを見る。見れば電車道一直線だった。彼はそれを見て心の中で笑うのだった。
「そう来るのなら。俺だってな!」
 柔道での経験を生かすつもりだった。体当たりならお手のものだ。しかも彼は体格に恵まれている。こうしたぶつかり合いはお手のものだったのだ。
 その彼に向かう相手こそ無謀だった。しかし相手は彼のことを知らない。それもまた彼にとってはいいことであった。何もかもが彼にとっていいことであった。その中で相手は彼にぶつかるのだった。その瞬間だった。
「今だ!」
 彼は思いきり前に出た。そうして逆に相手にぶつかるのだった。
 力は彼の方が圧倒的に強かった。やはり柔道の経験がものを言った。相手はそれでフ白に吹き飛ばされた。何とか倒れずに踏み止まったがそれにより態勢を完全に崩してしまった。これこそが卓也の狙いだったのだ。そして彼はそれを逃しはしなかった。
「もらった!」
 そのまま前に出て面を決める。初心者とは思えない程奇麗に面が入った。誰がどう見ても一本であった。それで勝負は決まった。体当たりで流れを掴まれた相手はもうどうすることもできなかった。もう一本も呆気なく決められて勝負は終わったのであった。卓也にとっては鮮やかな勝利であった。
「やったな」
「ああ」
 試合が終わってから卓也は笑顔で部員達と話をしていた。皆彼の会心の勝利を祝っていた。
「まさかな。あんなに上手くいくなんてな」
「自分でも思わなかったのか」
「思うわけないだろ?」
 また笑って彼等に告げる。
「俺は初心者だぜ。それなのにこんなに上手く勝てるなんてな」
「素質、じゃないよな」
「ああ、それはない」
 自分でもそれは
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