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シェフはフロイライン
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第一章

                      シェフはフロイライン
 池澤一希はだ。遂にだった。
 念願のウィーン留学が決まった。とはいっても音楽での留学ではない。
 語学での留学だ。彼の大学での専攻はドイツ語なのだ。それでだ。
「いやあ、ずっと夢だったんだよ」
「この街に来るのが?」
「そうなんだ」
「うん、そうなんだ」
 そのウィーンの大学においてだ。学友となったそのウィーンの学生達に満面の笑みで話す。縮れている髪を金髪にしていていささか収まりを悪くさせている。眉は黒く短い。顔は人懐っこい感じでありアーモンドを薄くした様な目は一重である。 
 鼻と口が大きい。そして背はオーストリア人と比べての遜色ない。
 その彼がだ。笑顔で学友達に話すのである。
「ドイツも好きだけれどね」
「オーストリアの方が好き」
「だからか」
「そうなんだよね。ほら、オーストリアってね」
 ここで彼のオーストリアへのイメージを話すのだった。
「優雅って感じするじゃない。貴族って感じが」
「ドイツにも貴族いたけれどな」
「だよね」
「欧州だし」
 欧州は長い間貴族社会であった。それはオーストリアもドイツも同じだ。
「そもそも我が国とドイツは同じ民族だし」
「大して変わりないけれど」
「それでもなんだ」
「オーストリア留学にしたんだ」
「それもウィーンに」
「そうだよ。だからだよ」
 また笑顔で話す一希だった。
「いや、貴族のお嬢様と御会いできたら最高だね」
「いるよ、ちゃんと」
「だから欧州だから」
 返答がだ。すぐに来た。
「このクラスにもね」
「いるけれど」
「えっ、いるんだ」
 その話にだ。驚きを隠せない一希だった。
 それで目を丸くさせてだ。学友達に話すのだった。
 教室は白い壁と茶色の連なっている机と椅子である。この辺りは日本の大学と同じだ。教室が講壇を一番下にして階段状になっているのもだ。
 だがそこには何処か優雅さがある。歴史もだ。殺風景ではない。むしろ心なしか優雅だ。部屋のデザインがそうなのだ。その中にいてだ。
 彼はだ。驚いて学友達に尋ねるのだった。
「その、お嬢様が」
「そう、フロイラインね」
「いるよ、ちゃんと」
「それも伯爵家のご令嬢がね」
「完璧だね」
 思わずこう言った一希だった。
「本物のフロイラインじゃないか」
「ひょっとしてそれが見たくて?」
「ウィーンに来たとか?」
「まさかと思うけれど」
「いや、それだけじゃないけれど」
 だが、だった。しっかりとそうもあると言ってしまった彼だった。
 そしてそのうえでだ。さらに言ってしまうのだった。
「けれど。やっぱりそこがウィーンだね」
「貴族のフロイラインがいて」
「それでだっていうん
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