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至誠一貫
第一部
第六章 〜交州牧篇〜
八十三 〜来客〜
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人々はある程度、歳三さまのやり方を診ているはずです」
「それはそうですが……」
「初めは、この桜花さんも懐疑的だったのですよ? 在野の士が、同じように様子を見ていたとしたら……どうです?」
 ハッと、愛里は顔を上げ、
「なるほど。確かに状況が変わっていますね」
「それだけではありませんよ。そうですよね、桜花さん」
「ええ。土着の豪族である私が、歳さまに従っているのです。説得力は十分だと思いますが?」
「……そうですね。ならば、早速取りかかりましょう」
 そして、愛里は私を見て、
「折角ですから、それ以外の文官や将も募りませんか?」
「良かろう。愛里と桜花、二人で進めよ」
「はいっ!」
「承知です」
「それから山吹。お前には当面の間、交趾郡と鬱林郡太守に就いて貰いたい」
「兼任、という事ですか?」
「そうだ。人材がおらぬ事を理由に、空白を作る事は許されぬ。無論、正式な太守が決まるまでの間で良い」
「構いません。それでは、直ちに向かいます」
 慌ただしく、三人は出て行った。

 それから暫し、執務室で書簡の処理をしていた。
「歳三おにいちゃん、入っていい?」
 この声は、璃々か。
「構わんぞ」
「はーい」
 紫苑が一緒かと思ったが、どうやら一人のようだな。
「璃々」
「うん? なあに?」
「私の事を、兄と呼ばなかったか?」
「そうだよ。だって、鈴々ちゃんもお兄ちゃんって呼んでるし。風さんだってお兄さんでしょ?」
「……確かにそうなのだが」
 妹のように思うには些か幼いのだが、そこまで思い至っている訳ではなさそうだ。
 皆に好きに呼ぶよう言っている以上、気にしても詮無き事か。
「紫苑はどうした?」
「おかあさん、弓兵の訓練で忙しいみたいだよ? だから、璃々は一人で遊んでいるの」
「そうか。だが、私も仕事中だぞ?」
「でも、もうお昼だよ? ごはん食べないの?」
 璃々の言葉に、窓の外を見る。
 日の位置が、いつの間にか高くなっていた。
 どうやら、二刻程集中していたようだ。
「では、昼食の誘いに参ったという訳か?」
「うん!」
 にっこり笑う璃々。
「わかった。ならば昼に致そう」
「わーい。ねえねえ、早く行こう?」
「そう急かすでない。……行く、という事は城下か?」
「そうだよ?」
「ならば、誰ぞ声をかけねばならんな。私一人で出歩くな、と釘を刺されているのでな」
 だが、愛里らは出て行ったまま未だに戻っておらぬ。
 璃々の話からすると、紫苑や彩(張コウ)らは調練の最中であろう。
 ……食事と言えども、この有様では声をかけて良いものかどうか。
「城内の食堂ではいかぬか?」
「えー。お天気もいいんだし、璃々お外に出たい」
 さて、困った。
 総司のように、子供のあし
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