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八神家の養父切嗣
二十二話:Fate〈運命〉
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れるのだった。

「それでも…それでも…っ、これで正しいんだ!!」
「何が……何が正しいと言うんだ?」

 恐る恐る尋ねたクロノに鬼のような眼光を向ける切嗣。
 先ほどとは別の理由で思わず怯んでしまうクロノ。
 だが、そんなことはお構いなしに切嗣は叫び続ける。


「死ぬしか他にない者が殺され、死ぬ理由のない人達が救われた!
 これが―――正義(・・)でなくてなんなんだッ!?」


 自分自身に語り聞かせるように、納得させるように悲鳴を上げ続ける。
 本心ではわかっている。それもまた、偽善で、独善的なものに過ぎないのだと。
 ただ、それでも衛宮切嗣は犠牲に報いる対価を得るために同じ方法で皮肉な正義を為し続けなければならない。

「だから…ッ、僕は絶対に正義を行い続けないといけない!」
「どうして…? どうしてそんなに悲しい想いをしてもまだ続けられるの?」

 なのはが目に涙を浮かべながら聞く姿を、ぼやけた視界で見ながらコンテンダーを構える。
 もう、何をしたいかすら分からなくなった。途方にくれ立ち続けていたい。
 それでも―――引き返すにはもう遅すぎる。


「だって、僕は……もう―――愛した娘(はやて)を殺したんだからッ!!」


 先に進めば進むほどに、犠牲を増やせば増やすほどに後戻りができなくなる。
 それが大切な者であればあるほどに意固地なって走り続けなければならない。
 決して終わることのない絶望への片道を。ただ、走り続ける。

「邪魔をするなら……容赦はしない…ッ」
「来るぞ!」

 右手にコンテンダー、左手にキャリコといった装備に切り替えて切嗣が動き始める。
 戸惑うなのはとフェイトを守るためにクロノは前にでて、S2Uを構える。
 必ず、ここで終わらせる。
 そう覚悟を決めた二人がぶつかり合おうとした瞬間―――巨大な氷塊が崩れ去った。

「―――あ」

 掠れた声を上げ、振り返る切嗣。背後でクロノが何事か叫んでいるが耳に入らない。
 彼の視線の先には所々凍っているものの動きには障害のない姿で宙に浮く者がいた。
 煌めく白銀の髪に、雪のように白い素肌。血のような赤さを備えながら、なお美しい瞳。
 闇の書の意志がその封印から解き放たれていた―――その瞳から新たな涙を流しながら。

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