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相模英二幻想事件簿
File.1 「山桜想う頃に…」
Y 4.11.PM7:48
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「二人とも、出ていいぞ。」
 翌朝、疲れ切った顔で松山警部は私達を留置所から出してくれた。
 彼の顔色が悪いことから何かあったことを察知したが、それ以上に、松山警部の後ろへ一緒にいた二人に私達は驚かされた。
「亜希、それに結城じゃないか!」
 そこには妻の亜希と、私が学んでいた大学の後輩である結城がいたのだ。
 結城は現在、敏腕弁護士として活躍している。いつも忙しく駆け回っている彼が、何故こんなとこへ来てるんだ?
「先輩。昨日亜希さんから連絡もらって、急いで仕事片付けて来たんですよ?また事件に巻き込まれてるようでしたから…。」
 やっぱり亜希が連絡入れたのか…。結局あの後、話をしている余裕も無かったから仕方無いか。その後ろでは、呆れ顔で亜希が私を見ていた。
「もう…あなたってば、こう言う事件によく巻き込まれるわね…。全く、連れていれたから心配しちゃったじゃないの。」
「すまん…。松山警部は電話は駄目だと、僕も藤崎も持ってた携帯取り上げられてなぁ…。」
 私が苦笑いしながら亜希に言い訳を並べていると、それを聞いた結城は半眼で松山警部へと言った。
「先程もお話しましたが、ここでは違法行為が甘受されているようですね?きっちりと理由を述べて頂きたいものです。答えによっては…」
「分かった!分かりました!全て俺が悪いんだよ!」
「警部。悪いのはもう分かりきってるんですよ。その理由を教えて頂きたいと言っているのですが?まさかとは思いますが…何の理由も無く、一般市民を留置したんじゃないですよねぇ?」
「…!」
 まさか…桜の花弁を証拠にとは言えまい。松山警部は冷や汗をかきつつ、そのまま黙るしかなかった。私はいつも思うんだ…結城を絶対に敵に回したくはないと…。
「ま、まぁ…一応は疑いも晴れたことだし、もうこの件は良いから…。それで松山警部。結城が来たから出したって訳じゃなさそうですね。」
「察しがいいな。実は…そうだ。」
「また…誰かが?」
 私がそう問うと、松山警部は腕を組みつつ、近くにあった椅子へと座った。かなり言いづらそうだったが、暫くして起こったことを話始めた。
「本来、部外者には話しちゃならんのだが、今回の事件はどんな些細な情報も欲しいからな…。」
 松山警部はそう前置きして内容へと入った。
 警部の話によると、昨日の夜中に警察署へと、あの旅館から再び通報が入った。旅館自体、現在は客を民宿などに移ってもらうなどして、一時的に休業状態にして葬儀の準備を進めているのだが、最初その葬儀についてのことだと警部は考えたという。女将の亡骸がいつ旅館へ帰れるか分からなければ、葬儀のやりようがないからだ。
 だが、話している人物の声が変だと気付いて、直ぐに事件だと思ったという。
「電話を入れてきたのは、旅館で仲居頭をやってる
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