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相模英二幻想事件簿
File.1 「山桜想う頃に…」
W 4.10.PM9:17
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良いんで教えて頂きけませんか?」
「亜希…。」
 私は呆れ顔で妻を見た。昔からこんな感じなんだよな。自分だけが無礼講みたいで、こっちがヒヤヒヤさせられるんだよ…。藤崎も苦笑いしてるが、女将さんはそんな亜希の言葉が嬉しかったようだ。
「喜んでお教え致します。宜しければ午後には時間が空きますので、その時にでもいかがでしょうか?」
 亜希はそれを聞いてやる気満々だが、私は慌てて止めに入った。何せ相手は病人と言ってもいい…昨日倒れた人間なんだからな…。
「女将さん、大丈夫なんですか?昨夜倒れたばかりですし、時間があれば休んだ方が良いかと思いますが…。」
「お気遣い有難う御座います。お恥ずかしいことですが、どうやら寝不足が原因のようで御座いまして…。ですが随分と寝過ぎてしまいまして、逆に早くに目が覚めてしまいましたの。先生も栄養剤を処方して下さっただけですのでご安心下さい。」
「そうだったんですか。それを聞きまして、こちらも安心しました。」
 女将の話を聞き、私達三人は胸を撫で下ろした。
 だが、ふと昨夜の浴場でのことが頭を過り、なんだか妙な胸騒ぎがした。ひょっとしたら…この旅館に、何か悪いことが起こるのではないか?
 正直な話、私に霊感があるとは思えないし、ああいった風に霊と遭遇するのは稀だ。
 しかしだ…探偵としての直感が「ここには何かある。」と告げている。何と言って良いか解らないが、とにかく嫌な予感がしてならないのだ。
「へぇ!それでこの旅館を?」
「はい。この旅館は代々女将が取り仕切り、主人も私と結婚するのを随分と悩んだそうです。」
 人が考え込んでいる間に、亜希と女将は別の話に夢中になっていた。ま、亜希がまた質問でもしたんだろう…。
「それじゃ…結婚前から話合って?」
「ええ。私は主人と添い遂げるつもりでおりましたので、早くに話を通してもらって、結納前からここで修行させて頂きました。」
「そうなんですかっ!?それほどご主人を愛してらしたんですねぇ。」
「あらやだ、お恥ずかしい。私ったらこんな話を…。これは長居してしまいました。私はここで下がらせて頂きますわ。それでは皆様、ごゆっくりお寛ぎ下さいませ。」
 亜希と話して後、女将は思い出したかのように部屋を出ようと襖を開いたが、その時、何の前触れもなく異変が起きた。
「グフォッ…!」
 私達が見ている前で、女将がいきなり吐血し、廊下に向かってそのまま倒れ込んだでしまったのだ。
「女将さん!?」
 私は咄嗟に駆け寄って女将を抱え起こしたが、女将は既に息をしていなかった。
「英二、どうしたんだ?直ぐに人工呼吸を…」
「駄目だ!」
 藤崎の言葉を私が否定したため、藤崎も亜希も表情を強張らせた。
「あなた…女将さん、どうしちゃったの…?」
 亜希が恐る恐る聞いてきた
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