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藤崎京之介怪異譚
case.6 「闇からの呼び声」
T 12.5.AM8:11
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だろう…。
 俺がそう思った時、奥から何かが割れる音がしたため、俺達は顔を見合せて奥へと急いだ。
すると…そこにはもう一人の神父が…ドミニク神父の首を掴んで持ち上げていたのだった。
「シンクレア…神父…何故…!?」
 ドミニク神父は両手で相手の腕を掴んでいるがそれはびくともせず、その中で苦し気にそう言った。
 この人物がシンクレア神父だと言うことは分かったが、その顔は蒼白で目も白く濁っており、首には深い切り口が開いていた。とても…生きているとは思えない…。例えるなら“生きた屍"とでも言おうか…。映画などで馴染みのある“ゾンビ"と言う言葉の方がいいかもしれないが…。
 俺は我に返り、ドミニク神父を宙吊りにしているそいつへと体当たりした。だが…全くびくともしない。石か鉄ででも出来ているかの洋にそれはそこに立ち、尚もドミニク神父を締め上げ続けている。
「神の独り子イエス・キリストの御名において命ずる。汝、その躰より離るるべし。如何に隠れようとも、神から逃るることなからん。聖別されし躰より出でて、二度と戻るることなかれ!」
 後方で宣仁叔父がそう叫んで聖水を振るい掛けると、それはいきなり苦しみ出し、ドミニク神父を手放したのだった。俺は直ぐ様ドミニク神父を安全な場所まで運び、再びそれに対峙した。すると、それは無表情な顔をして言ったのだった。
「これで終わりだと思うな。それしきの言葉で我等を追い出せるものか。」
 男とも女ともつかず、老いてるのか若いのかさえ解らない声…。いや、幾つかの声が入り交じっているようにさえ感じる…。
 宣仁叔父はそれの言葉に、険しい表情をして返した。
「汝は何者ぞ?」
「我等は何者でもない。」
「何者の命で動いているや?」
「我等は何者の命も受けることなし。」
 叔父はますます険しい表情になり、そしてこうそれに言った。
「いいや、汝等は命がなくば触れられず、話すこともならん。故に、汝等の名と命じた者の名を告げよ!」
 宣仁叔父がそう怒鳴ると、それは一歩たじろいだ。叔父が畳み掛けに何かを言おうと一歩前へ出た時、それは後方の窓を破って外へと逃げてしまったのだった。
「叔父様…あれは、何だったんですか…?」
「躰は見た通りシンクレア神父だが、中は恐らく…レギオンだろう。」
「…マルコ福音書に出てくる…?」
「そうだ。イエスは奴等を男より追い出し、家畜の中へと追いやった。その家畜は断崖から落ち、そのまま溺れ死んだのだ。だが、ここで奴等を追いやれば、途方もない被害を及ぼすと思ってな…。」
 レギオンとは、元来ローマ軍を示す言葉だったが、それが転じて「軍隊」や「軍団」と言った意味合いに置き換えられた。要は、一つの器に複数の悪霊が憑いた状態なのだ。
「では…あれはもうシンクレア神父ではないと…?」
 俺達が割
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