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乱世の確率事象改変
不明瞭な結末の後に
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 少女兵士達を殺すことに恐れを抱いていた兵士達が大半ではあるが、少なくとも一つの部隊だけはそれほど大きな衝撃は受けて居なかった。
 劉備軍の中でも一番突撃に優れ、一番勇猛に長けた男くさい兵士達……即ち張飛隊である。

 初めこそ動揺したモノの、彼らの切り替えは早かった。何せ、掲げる将である張飛――鈴々がいつも通り真っ先に踊りだしたのだから。

 蛇矛一閃、跳躍にて放たれた一振りで迫りくる少女を吹き飛ばし、彼女はまず道を作った。
 なんともいえない表情をしていたが、その意味を知らずとも鈴々に着いて行くのが彼らの仕事。常の戦と同じく追随すればいい。
 関羽隊や趙雲隊とは別行動として、纏まって戦う事を避けた結果が張飛隊の孤立、そして単体突破であった。

 鈴々がする戦場での動きは誰にも読めない。軍師がいればその言に従うも、彼女独自で判断した動きは肩を並べる将でも読み切れない。
 今回はどうか。
 敵の最中を真っ先に切り拓いて、背中を見せて遠くに走る。ただそれだけの行動に出た。
 しかして、“狩り”と判断していた南蛮兵達は鈴々の動きを見逃すはずも無く、その背に追い縋るように多くを動かすしかない。当たり前だ、突破されたとしても逃げる背を追わずして狩りとはいえないのだから。
 動物にしても人間にしても、集団で何かを追い詰める時は弱い者から狙うのは定石である。
 見た目も相まって、同じくらいの年に見える鈴々と引き連れる舞台が一番弱く見えたのであろう。

 その単純な判断こそ南蛮兵にとって最大の失策であるとも知らずに。

 結果的に見れば、鈴々の行動は味方の軍全体の被害を一番に減らした。
 各個の部隊としての動きは劉備軍として当然あり、それぞれの部隊と並んで連携行動を取る演習も積み上げてはいる。しかしながら愛紗にしても星にしても、優れた将であるが故に森という限定された戦場では互いの連携が取り辛い。
 一つ所に纏まって戦えば蹂躙されるしかない。三人の将が狭い範囲で指揮をしても些細なズレが生じてしまう。それぞれ最善と判断した命令が異なった場合、兵士達の躊躇い一つで被害が甚大なモノとなってしまうこともあるのだ。
 阿吽の呼吸は開けているからこそ出来る。よく見通せる目と状況判断の思考が重ならなければ、こんな狭い森の中では彼女達とて十全の力を発揮しきれない。
 単純明快な各個撃破出来る戦場を作り上げたという点で鈴々の働きは大きい。仲間が負けないという信頼あってこそだが。
 まさか抜けられるとも思っていなかった南蛮兵達は動揺を隠せず、さらには、張飛隊の一直線さを止められないと本能的に理解したらしく受け止めることなく背を追うことを決めた。

 例えば野生の猪がいるとしよう。
 猪如きと侮ることなかれ、彼のケモノの突撃は人が真
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