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SNOW ROSE
兄弟の章
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ねられているではないか。少しばかり名が知れたとて、根も葉もない噂が流れるとは思えん。」
 そう語り合っているうちに、目的地であるメルテの村に到着した。
 馬車は村の入り口付近で停止したが、二人はまだ考えていた。
 深く考える程に不思議さが増すのだ。まるで成るべくして成った…そう思わせるような節があるのだ。
「まさか…な…。」
 サンドランドは眉間に皺を寄せ呟いた。男爵もまた、難しい顔をしてはいたが、考えても始まらぬという風に立ち上がった。
「これこそ神のみぞ知る…だな。今は彼らのために、我らに出来ることをしようではないか。」
 そう言うと、男爵は馬車から下りていったのであった。

 村では、男爵が訪問すると知らせを受けたのが一日前であった。村長に便りが届くや、蜂の巣を突いたような騒ぎとなった。
 ここ数年、村を治める子爵以外は、お偉い様が訪れることなぞなかったからだ。
 一行が村へ到着し、男爵らが馬車を下りてくるや、村長を始め村人達が出迎えた。
 村長は直ぐに男爵らを宿舎の方へ案内し、出来得る限りの持て成しをした。
 男爵やサンドランドは、このような待遇を望んではいなかったが、楽団員達は大いに喜んでいたため、有り難くこの持て成しを受けることにした。
 そこへ村長が、恭しい態度で男爵の傍へ歩み寄った。
「男爵様。告げられました通り、教会に合唱隊を呼び寄せる手筈は整いました。兄弟の墓の前には、椅子と譜面台を直ぐにでも設置出来るよう指示してまいりました。如何なさるおつもりで…。」
 村長がこのよう動いたのには訳がある。男爵が予め便りを書いて指示していたからである。
「書いた通り、今は亡き兄弟への哀悼演奏をするのだ。我もそれに参加する。彼らの才能に敬意を表してな。」
 この言葉を聞き、村長は目を丸くしてしまった。
「男爵様自らお出になられるのですか!?」
「ん?何か不満でもあるのか?」
 そんな村長の顔を見て、男爵は片眉を上げた。
 それに気付いた村長は、冷や汗をかきながら頭を垂れた。
「い、いえ、滅相もございません。私も是非拝聴しとうございます。演奏の時を、心よりお待ち申し上げております。」
「まぁ良かろう。明日の昼、教会での演奏の後墓所に赴くゆえ、その時に椅子と譜面台を用意せよ。」
「畏まりました。」
 村長は男爵の指示に返事をすると、そそくさとその場を後にしてしまったのであった。
「リチャード、あまり村長を揶揄うな。」
 サンドランドは苦笑いしながら男爵を嗜めた。
「まぁ良いではないか。明日からは揶揄う暇もなくなると言うものだ。しかし、幾つかの楽曲は練習が足りん。特にマルクスとジョージのカンタータは、ある意味対位法技術の見本市だ。合唱と管弦楽を合わせる時間を取らねばな。」
「そうだな。お前の楽団の水準
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