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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
52話
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 ――――言葉が走った。
 奇妙なその感覚に、束の間我を忘却したみさきは、その言論の裏から突き破るようにして現前したその混沌に反射反応を行使した。
 それに遅れるようにして音を鳴らす警告ウィンドウ。よそ見をするなと叱咤する甲高い音に口を堅く噤んだみさきは、殺到する火箭を意識した。
 《ジム・カスタム》に《ジム・スナイパーカスタム》が数機。そしてネオ・ジオンの《ガザD》が2機。どれも骨董品でしかないその数機の機影の放つ砲撃は、全身に重装甲を施す《νガンダム》を害するにはいたらない。だが、彼女が守るべきは己ではなく他者だ。
 《νガンダム》が翼を広げる。そうしてその翼を構成する羽の一枚一枚がユニットから切り離され、放射版にしか見えなかったそれが身震いする。コの字に変形するや、小魚が親魚に寄りそうように周囲に展開。そのまま前面に展開する敵目掛けて襲い掛かるのではなく、後方へと逸れていく。
 90mmの砲弾が砲より弾き出される寸前、《νガンダム》は己が載るベースジャバーのプラットフォームから飛び出す。
 高速に乗ったベースジャバーはそれだけで質料兵器と化す。2本のスラスターユニットから炎を吐き出したS.F.Sが《ジム・スナイパーカスタム》に直撃し、体制を崩したところにビームライフルの照準レティクルを重ね、トリガーを引く。出力を調整し、アサルトライフルの連射さながらに断続的に閃いたビーム光が胴体に吸い込まれ、ぷっくりと炎を上げた。
 《νガンダム》が砲撃で牽制する一方、可変したままの《ハンブラビ》が一気に猪突。海鷂魚の如き姿のまま肉迫し、その姿のまま腕からビームサーベルを発振させて《ガザD》を串刺しにする。背後から接近した《ジム・カスタム》が白熱化すらしていないヒートサーベルを振り上げた瞬間、テールスタビライザーをも兼ねる堅牢な『尾』が《ジム・カスタム》の右腕を貫き、怯んだ瞬間に変形と共に反転した《ハンブラビ》がビームサーベルを薙ぎ払い、胴体と下半身を永遠にお別れさせた。残存する機体も殲滅し、陸戦部隊を乗せたベースジャバーが先へと向かう。
(中心部というのに随分散発的だな)
 胸に風穴を開けた《ジム・カスタム》を蹴飛ばし、ダークブラウンの《ハンブラビ》が身じろぎもしないで振り返る。とんがり頭の後頭部に灯った光―――奇妙な感情を抱きながら、みさきは肯いた。
 旧サイド5のコロニー26バンチ『ニューオクラホマ』。採光ミラーはほとんど損傷していながら、なんとか原型を保っているその巨大な構造物こそ、かつてのデラーズ紛争の拠点として運用された茨の園の全容だ。ベースジャバーの周囲にファンネルを浮遊させたまま、機が『港』へと入っていくのを確認したみさきは、フットペダルを踏み込む前に背後を振り返った。
 それにしてもなんなのだろう―――視線を巡らす。いつも通り、
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