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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
25話
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「さて、これが次の相手になるわけだが」
 20畳ほどの広さのブリーフィングルームの一画で、琳霞は大画面のモニターが設えられた前面を注視した。
 部屋の中の人数は6人。前に立つ中隊長の話を熱心に聞く2人は第1小隊の面々だ。その後ろの列に並ぶ琳霞とそのほか2人が第2小隊の面々、ということになる。もちろん気だるげに聞いているものはいない。第1小隊のメンツは確かに国粋主義者たちで殊に式が高いが、あくまで程度問題だ。ジオンという己の生まれ育った地に愛着を持ち守ろうという気持ちは、琳霞の部下2人も持ち合わせている。たとえどのような扱いにせよ、その気概だけは負けないという自負は、ここにいる全員が等しく持ち合わせているはずだ。
 モニターに映る情報の型番はRGZ-93先行量産モデルに、MSZ-006C1/2。C1型の攻撃機型で、差異は頭部のハイ・メガキャノンが一門あるという点だ。
 そして―――琳霞は自分のテーブルの上の資料に目を落とした。
 ORX-013―――サナリィに飼いならされたオーガスタの麒麟児の3機編成。そして、そのアヒルの子に、あの男が乗っている―――。ただデータとして表示されたパイロットデータは、文字しかなく別に顔が写っているわけではない。だが、琳霞はそれを血肉の通った生の人間として捉えられていた。
あのやや潰れ気味の鼻に、困ったように垂れた眉。街をあるいていたらそこら辺に居そうな凡庸な顔立ち―――資料から目を離した。
「貴様たちはどう思う?」
 腕組みした中隊長が皆を見回す。
 もちろん、単なる思考放棄ではない。確かに中隊長が何でもやってしまえば楽だが、それは一方で部下は何もしないということになる。
良い指揮官とは、なんでも一人でこなすのではなくできることは部下に任せ、己にしかできない仕事をするものだ。それに、己で考え、作戦を練るための土壌を作ることで部隊員すべての力量を上げ、ひいては軍全体の―――というわけだ。
さっそく前列の一人が手を上げる。
「機種がバラバラというところがまずウィークポイントでしょうか。第3世代機の《ゼータプラス》と《リゼル》でどちらもΖ計画の機体ですからともかく、第4世代機の《ガンダム》では、他2機とは連携は取れないのではないかと」
 肯定するように何人かが頷くが、前列のもう1人が顔を険しくする。
「しかしそれならどうして敢えてその編成にしたんだ? わざわざそういう編成にしたんだから、何か裏が―――それこそ、今お前が言ったような推測をさせて、裏をかくってのもありうるんじゃねーか?」
「それについてはあたしが」
 言いながら琳霞が手を上げる。腕組みした中隊長が頷く。
「資料のパイロットデータのところを読めばわかると思うケド、《ガンダム》のパイロット―――今年士官学校を卒業したてのほやほや少尉よ。ちなみ
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