暁 〜小説投稿サイト〜
101番目の舶ィ語
第三章。音速を超えしもの
第七話。遭遇
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
2010年6月19日午前0時半。

土砂降りだった雨が、真夜中には止んだ頃。
俺と一之江は、二人でコンビニに向かっていた。アイスの買い出しだ。
二人で出たのには理由がある。
お風呂に入ったばかりの詩穂先輩や音央、鳴央ちゃんを連れて出したら湯冷めしそうだったからだ。
というのは建前で……本当は一之江とゆっくり会話したかったからだ。

「『ベッド下の斧女』はそんなに凄かったのですか」

「ああ。あれはなんていうか……バグだな。存在自体がチートな奴だから。正直一之江が来てくれてよかったぜ」

さすがの一之江でもあの人を倒せるとは思えないが、一之江が負ける姿も想像できない。戦いになっても一之江ならなんとかしそうな気がする。

「私の強さが解りましたか」

「身にしみたっていう感じだな」

「身に刻んでもいますしね」

「正直、本当に勘弁してほしいんだが」

「あの痛みを知っているからこそ、敵に襲われても頑張れるんですよ。それこそ音央さんの時のように」

一之江のその言葉で音央を探しに『妖精庭園(フェアリーガーデン)』の中に突っ込んだ時を思い出す。
あの時。茨の棘が刺さりまくりかなり痛かったが、それでも前へと進めたのは『一之江の刃物の方が痛い』とか思ったから、という事実があるわけで……

「いや、それを見越したとしても、本当に痛いんでマジでやめて下さい」

文句を言ってやろうと思ったが、背中にチクチクとした硬いものが当たった瞬間、口から出た言葉が途中から敬語になった。
矜持(プライド)? 何だそれ、喰んのか?

「まあ、私も鬼ではありません、ほどほどにするとしましょう。グサグサ」

「って言いながら人の背中を刃物で突付くなよ??」

「今私に命令しましたか?」

「……麗しき一之江瑞江様。その刃物によるザクザク攻撃をお止め遊ばせ下さいませ」

「よしなに」

あっさりと突き刺す手を止める一之江。
クソ、一之江の奴!
俺の背中を突き刺すのが当たり前になっていやがる。
最初のうちは嫉妬とか、お叱りの合図だと思っていたが。今となっては単に暇つぶしに刺しているような気がする。
それだけ打ち解けたから、親愛の表現のようなものと思いたいが……なにより厄介なのが、そのザクザク攻撃にすっかり慣れてしまったせいで刺されるのが当たり前になっていることだ。
アリアのガバハンと言い、一之江のザクザクといい、スキンシップが過激過ぎる女子が多いな。
俺にはそういった女子しか寄ってこないのか。
泣けてくるぜ。
思いがけずではあるが、せっかく新たな人生を歩んでいるのに……俺には安らぎがないのか。

などと内心愚痴りながらも。

「『ベッド下の男』はもう解決でいいのか?」

倒せなかっ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ