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ソードアート・オンライン〜Another story〜
ALO編
第141話 グランド・クエスト
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《キリトとリーファ》

 その2人の戦い。兄妹の戦い。

 それは、あの《キリト&ドラゴ vs ユージーン&ジェイド》の一戦とは違う意味で、負けずと劣らない程のものだった。

 あの時の4人の戦いは剛の戦いだった。だが、2人の戦いはまた違う。

 言うならばキリトとリーファの戦いは、《舞闘》と呼ぶに相応しいものだ。

 武器が弾かれる勢いを利用し、同時に2人は地を蹴り背中の翅を震わせる。翅は後付けではなく、元々最初から自分の手足だったかの様に自由自在に操り、優雅に宙を舞う。その動きは、息のあった舞踊の様であり、交錯点で剣を撃ち合い発生する光と音も、戦いの中での美しさを際立たせていた。

 リーファは、妖精の剣士として、そして剣道の選手として、キリトの動きに感嘆を覚え、自分がかつて体験したことのない領域に上り詰めつつあるのを感じていた。これまで、自分が体験してきた決闘の決着、その優劣は単純な武器の性能の優劣におけるものだけだった。だけど、今は純粋に剣と剣の技術のぶつかり合い。自分を上回る剣士と相見え、それが誰よりも 愛する人だったことに、リーファは歓喜にも似た感情を味わっていた。
 例え、想い人に もう二度と心が交わることがないとしても、この一瞬、剣と剣の交わりだとしても、報われたと、そう思ったのだ。

 やがて、大きく間合いをとった2人は同時に翅を広げた。

 ……次の一刀が最後の一撃。それは互いに意志が伝わった様だった。互いが其々答える様に、緩やかに剣を構えたのだ。

 一瞬、凪いだ水面のような静謐が訪れる。

 リーファの頬を音も無く涙が伝い雫となって落ち、静寂の中に波紋を広げた。それが、合図だった。2人は、空を焼き焦がす勢いで、中を駆けた。互いが其々の種族を象徴する色を纏い、閃光と化す。

 そして、もうほんの一瞬、その刹那の時間で剣が交錯し合うであろう直後に、彼女はある(・・)行動を取ったのだ。

 それは、キリトを見ずに、剣すら手放し、両腕を大きく広げ、そのキリトの剣を受け入れようとした。リーファが、直葉がずっと、ずっと考えていた事がこれだった。例え、キリト……和人の剣をこの身に受け その身体を捧げたとしても、和人が満足するなどは思えない。……が、それ以上に彼を深く傷つけたであろう自分の愚かしさを謝罪し得る言葉を、直葉は持たなかったのだ。

――……だから、せめて……その剣を受け入れよう。

 断罪の剣を、彼のけんのもとに自分の分身である、リーファと言う名の身体を差し出すことしかできないんだと思った。両手を広げて目を閉じ、その瞬間を待ったリーファだったが……。身体を覆う感触は、剣のそれとは違っていた。……自分自身の全てを、心から包み込んでくれる温もり、感触だった。

「……!?
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