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藤崎京之介怪異譚
case.5 「夕陽に還る記憶」
X 3.5.PM6:31
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たのだった。
「ところで、お兄様。先程のお話しの続きですけど。」
 暫く食事をして後、美桜が唐突にそう言ったので、俺は食事の手を休めて美桜に聞いた。
「何か掴めたのか?」
「ええ。ですけど、分かったと言うよりは、除外されたと言った方が良いですけど。」
「除外?なぜそうなるんだ?」
「だってその二人、お兄様が仰っていた方とは随分違うんですもの。」
 そこまで言って、美桜はワインを一口飲んでから後を続けた。
「先ず、二人共に音楽は聞かなかったそうですわ。ごく稀に友人に誘われて出掛けるくらいで、片や書や文学の愛好家、片や絵画が趣味のお嬢様。家には楽器一つなかったそうよ?詳しい年までは分からなかったけど、昭和初期には二人とも東京を離れたそうだし。何て言うか、親戚の家で花嫁修行をやらされてたようね。」
 とすると、残るは一人か。だが、どうも引っ掛かるんだよな…。この二人の朝実…全くの無関係か?同じ年頃で都内に在住し、本当に何の面識も無かったんだろうか…?もしかしたら、何処かで出会ってるかも知れないと思うんだが…。
「お兄様がお考えになっている通りですわ。」
 俺が考え込んでいると、美桜は笑いながらそう言った。昔から他人の思考を見透かしているようで、我が妹ながら末恐ろしい…。
「言ったでしょう、お兄様?私はお兄様が探してる朝実ではないと。でも、どうやら二人の朝実も面識があったみたいよ?」
「はぁ?何だかややこしいなぁ…。」
「まぁ聞いて。京都の小野家で見せてもらった旧い手紙が、九州へ行ってた朝実からのものだったのよ。その中に、東京の朝実についての記載があったの。」
「じゃ…三人とも知り合いだった…。」
「どうやら、九州の朝実が最初に東京の朝実と知り合ったみたいだけど。もう、なんてややこしいのかしら!たかが区が違うだけで役所が違うからこんなんなるのよ!」
「まぁ…手書きの時代だからな。」
 あぁ…こっちまで訳が分からなくなってきた…。まぁ、恐らく墓は分からないだろう。何せ戦前のことだし、美桜が聞きに言ったのも分家でしかない。本家の墓は東京にあったと思うから、空襲で壊滅しただろうからなぁ…。
 それはどの朝実も同じなんだが、現在の新しい墓には埋葬されてないってことだ。俺が探さなければならないのは、東京の朝実の《遺骨》と言うわけだ…。いや、“記憶"と言うほうが正しい気もするな…。

 暫くし、俺と美桜は食事を終えて話を続けていると、そこへ家の電話が鳴り響いた。固定電話にかかってくるなんて珍しい…。今じゃ、殆んどが携帯電話で済んでしまうからな…。
 俺はそんなことを思いつつ、鳴り止まない電話の受話器を取り上げた。
「もしもし。」
「あ、藤崎君かい?天宮だが。」
 電話の主は天宮氏だった。そう言えば、携帯の電源を切っていた…。多分
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