第6章 流されて異界
第123話 四ジゲンと五ジゲンの間にある物
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続けたな。
「これは出汁巻き卵と言うやつやな」
お弁当のおかずとしては標準的な物で、世間一般の男性の好物でもある。まぁ、これを美味く作る事が出来る女の子の評価は高いな。
俺もさつきに倣った訳ではないが、妙にしかつめらしい表情で、その標準的な大きさに切り分けられた出汁巻き卵を、まるで吟味するかの如き雰囲気で口に運び……そして、小さく首肯いた。
「うむ、美味い」
もっとも、元々、ふたりとも与えられたレシピを機械の如き精確さで再現する能力には長けている。故に、不味い物を作る訳はない。これは単にワザとハルヒに聞かせる為に発した一言。
むしろ、挑発した、と言うべき行為でしょう。
「あたしは別におかずの説明を聞いた訳じゃないわよ!」
何であんたが当たり前の顔をして有希が作ったお弁当を食べているのか。その理由が聞きたいだけよ!
最初から分かり切って居た内容を詳しく……。しかし、けんか腰で問い掛けて来るハルヒ。俺としては、お前が何に対してそれだけけんか腰に成れるのか、その理由の方が問いたいのですけどね。
そもそも、ハルヒの中の俺の立ち位置は未だ友人レベルのはず。但し、ほぼ唯一とも言うべき異性の友人で、更に彼女が求めていた異世界。比喩的な意味で現実世界と反対の意味での非日常が支配する異世界を体現した存在であるが故に――
「お昼休みの間に弁当を喰うのは当たり前の事やと思うけどな。違うか、ハルヒ?」
朝比奈さんの淹れてくれたお茶を飲み、一度、口の中のリセットをした後、ハルヒの方も見ずに正論を口にする俺。
もっとも、これは少し論点をずらした正論。おそらく、彼女が問いたいのは――
「あたしが聞きたいのはそんな事じゃなくて、涼子がお弁当を作ってくれるって言う話は断る癖に、何で有希と万結が作って来るお弁当は簡単に食べられるのか、……って聞いているのよ!」
予想通りの答えをくれるハルヒ。これの答えも簡単。
有希や万結は仲間だが、朝倉さんは違うから――
身も蓋もない答え。但し、そんな事を口に出来る訳はない。ならば……。
「ハルヒ、今日の日付は分かっているのか?」
それまでワザとそっぽを向いて……と言うか、弁当を喰って居たのだから、当然のように弁当を置いた折り畳み式の長テーブルの方を向いて居た俺が、ここに来て初めてハルヒの方向に身体を向けた。
相変わらずはっきりとした目鼻立ち。長い艶やかな黒髪が蛍光灯の白すぎる光をきらりと反射する。そして、リボン付きのカチューシャは見た目よりも幼く彼女を見せる役を担って居るかのように思えた。
……何にしても黙って立って居たら美少女なのは間違いない。但し、俺以外の人間を相手にする時は無愛想そのものか、もしくは地底
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