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藤崎京之介怪異譚
case.4 「静謐の檻」
\ 同日 AM10:43
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俺は心からそう思う…。
「無理に理解する必要なんて無いんじゃないか?だが佐野警部殿…それよりこれ、どう報告するつもりだ?外にも死体、中にも死体だぞ?」
「…大問題だ…!君、裏庭にまだ鑑識の野本君がいるはずだから、直ぐここへ来るよう伝えてきてくれ!あぁ、こうしちゃいられん!」
 相模に現実を突き付けられた佐野さんは、何かを思い出したかのようにバタバタと動き始めたのだった。
 だが…この手の事件は迷宮入りだ。なんせ現代科学ですら解明出来ないんじゃ、警察でもお手上げだろうからな…。俺はそんなことを思いながら団員達を下がらせ、それから山之内氏に歩み寄って言ったのだった。
「ここまで事が大きくなった以上、演奏会は延期になさるのが賢明かも知れません。それに…私にはこれを受け取ることは出来ませんので、お返ししたく思います。」
 俺はそう言って、前に渡された封筒を山之内氏へと渡そうとした。しかし、山之内氏はそれを受け取らず、俺にこう言ったのだった。
「何を仰います!こうして見事に解決されたではありませんか!これでやっと落ち着くことが出来ますし、義父のことも解明されたんです。これは先生に受け取って頂かなくては。それに、こういう時こそ音楽で多くの人達の心を癒すのも先生方のお仕事と存じますし、演奏会のスケジュールは変更無しでお願いしたいと…。」
 山之内氏の言葉を聞き、正直俺は驚いた。こんな警察沙汰でゴタゴタしている中、演奏会はそのまま行ってほしいと言うのだ。
「で、ですが…貴女は大丈夫なんですか?ここまで事件が大きくなれば、恐らくマスコミだって…」
「お気遣い痛み入りますが、私のことでしたらどうとでもなりますわ。聞けば、藤崎先生は天宮さんとお友達でいらっしゃるとか。」
「山之内さん…天宮さんをご存知なんですか?」
「ええ、もう二十年以上もお付き合いさせて頂いておりますわ。正直な話、この旅館の経営が苦しくとも、会社が順調であれば旅館をたたむ必要など無いんですのよ。マスコミくらいあしらってみせますわ。」
 この山之内氏との会話で、俺は思い出したのだった。山之内洋子と聞いて、俺はなぜそれを思い出さなかったんだろう…。彼女は…ここ数年で大成長した、某医療機器メーカーの社長だったのだ。そうだ…確か天宮氏も彼女の話をしていたような…。
 俺がそんなことを思い出さして慌てていると、山之内氏は笑いながら言った。
「藤崎先生。お金持ちは、別に偉くはありません。私は運が良かっただけですよ。これは私一人で築き上げたものではなく、働いてくれた従業員全員の力の賜物です。ただ、それを充分に生かしてきただけですもの。先生、私は先生の方が余程に偉いと思いますわ。それでは、私は事後処理がありますので、これで失礼させて頂きます。演奏会を楽しみにしておりますわ。」
 そう言って微笑み
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