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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百七十一話 奔流
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? シュタインホフ元帥を見たが彼も心当たりは無さそうだ。
「長老委員会がペイワードをリコールしたそうだ。新たな自治領主は、はて何と言ったか……。テレマン、ロバート・テレマンと言っていたな」
「……」
「その男が連絡してきた。反乱軍が駐留していたため已むを得ず反乱軍に従っていたが自分達の本心は帝国に有る。前任者は反乱軍に与していたため自治領主の座から追った。以前のように帝国の自治領として認めて欲しいと言っていた。帝国のために何でもするそうだ。言外にだが私への賄賂も匂わせていたな」
リヒテンラーデ侯が冷笑を浮かべている。

「地球教が動いた、そういう事ですな。それでなんと返答されたのです」
私の言葉にリヒテンラーデ侯が“ふむ”と鼻を鳴らした。
「精々励め、そう言っておいた」
噴き出してしまった。私だけじゃない、シュタインホフ元帥も噴き出している。そんな私達を見てリヒテンラーデ侯が声を上げて笑った。

この後、フェザーン方面第一軍がフェザーンを制圧する。フェザーンの自治権は廃止され新自治領主、長老委員会は地球教の協力者、帝国への敵対者として身柄を拘束される。そしてフェザーンに逃げ込んだ地球教団の残党も狩り立てられるだろう。

「多少の齟齬は有るが全体としては予定通り、そう見て良いのかな?」
笑いを収めたリヒテンラーデ侯が問い掛けてきた。シュタインホフ元帥に視線を向けると彼が頷いた。
「現状ではその通りです。但し、油断は出来ません」
「分かった、陛下にはそのように御伝えする」



宇宙暦 799年 3月 13日  ハイネセン  最高評議会ビル ジョアン・レベロ



最高評議会議長の執務室に入るとトリューニヒト、ホアン、アイランズ、ボロディン統合作戦本部長の四人が私を見た。四人とも険しい表情をしている。
「状況は?」
問い掛けるとトリューニヒトが“良くない”と言って首を横に振った。かなり疲れているようだ。目が充血している。多分昨日は碌に寝ていないのだろう。

「各星系からは如何すれば良いのかと悲鳴、いや怒号かな、問い合わせが来ている。無防備都市宣言を行って帝国軍をやり過ごせと言っているが如何なる事か」
「……」
「帝国軍が近付けば同盟から離脱して帝国に従属しかねない」
ボロディンもアイランズも、そしてホアンも無言だ。離脱、従属など認め難い事だろうが現実問題として同盟政府には彼らを守るだけの軍事力が無いのも事実だ。口を噤まざるを得ないのだろう。

「軍は如何なのだ?」
私が問うとボロディンがアイランズと顔を見合わせてから口を開いた。
「ヤン提督はイゼルローン要塞を放棄後民間人を安全な場所に移送するべく動いています。第十五艦隊のカールセン提督はヤン提督と別れハイネセン方面に撤退中です」
「……」

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