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不可能男との約束
各々の獲得
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ァは宗茂が寝ている医務室に来ていた。
アルマダ前の最後の髭剃りの為に今回は対剣神用に完全に強化と研ぎを入れた二枚刃の本気具合で剃りに来たのだ。

立花・ァ、参ります……!

その意気と共に刃を構え、剃ろうとすると宗茂は前回のようにそのタイミングで体を動かす。
そしたら顎の部分を剃ろうとしたのに頸動脈を危うくカットしそうになってドキドキである。

これが恋……!

これから宗茂様の頸動脈を見る度にこんな不整脈を起こしてしまうのだろうか。
確かにこんなに無防備に急所を晒されたらドキドキするかもしれない。思わず慣れた動きでそこに吸い込まれるように斬撃を放ってしまいそうだからだ。
しかし、実戦においてそんな分かりやすい隙を見せて最も危険な場所を晒す馬鹿はいない。
役職者じゃなくてもそういう時は何かがある、という判断を下すべき隙か。こちらが流れを引き寄せたという場合のみだ。
そう分かっているのに私の判断をこうまで狂わせるとは……!

「流石は宗茂様……! 寝ていても武人の生き方を損なわない人です……!」

自分と彼が過ごしたあの一時に間違いはなかったと、深く頷く。
そこまで考えて納得の感情から苦笑の響きに顔の表情を動かす。

「全く……随分と開き直ってしまいました」

穏やかに眠る宗茂の表情を見ながら余裕を得たというのか、単に覚悟が決まったのか。
随分と気分が楽になったものである。
宗茂が負けた時は意気消沈となって情けない姿を晒し、その度に辛気臭い面で医務室に来ていた小娘が口も開き直るとは。
時間が解決した、という事だろうか。
自分が思っているよりも前向きであったのかもしれない。
まぁ、少なくとも夫の寝顔を見ながら顔を歪ませ続けるよりかはいいだろう。
だからネガっている時の自分は酷いものであった。
寝ている宗茂様の顔を見ながら突然に背筋が震えて

このままでは私と宗茂様は"ずれて"しまうのではないのだろうか……

などと弱気を通り越して薄ら寒い被害妄想を浮かべてしまった。
同じ時間を共有していないと意思が通う事がないなどと思うとは不覚を通り越して自身への怒りに値する。
でも、だからこそその不安を思った瞬間に思い付いたのだ。

実はこれがあの剣神の歩法の肝なのではないかと。

知覚から消え去るという事は五感を含め、人の認識力から全てずれれば人は消えるのではないかと思ったのだ。
そこまで解れば歩法破りを編み出すのは難しい事ではない。
己に合わせてずれているのならその基準となら己を乱せばいい。
少し呼吸を止めればその時点で肉体のどこかが必ず乱れるものだ。
本当ならば試験として歩法を試しで使ってみたかったのだが無理であった。
歩法を使うというのは相手の癖や挙動、その他全てを理解しなけ
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