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【銀桜】6.野良猫篇
「誕生日は滅多に言えないことを言える絶好のチャンス」
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「ニャッ!?」
 ビクっと身構える白ネコ。腹黒い笑みを浮かべて見下ろす双葉。
「与えられたからには恩を返すのが礼儀だろ、人間もネコも」
「ニャーニャー!ニャニャー!!」
「まぁまぁそう固くなるな」
 暴れる白ネコを掴み上げ双葉はそのままカウンターに置く。
 何をされるのかと怯えるようにビクビクする白ネコだが―
「黙って私の愚痴を聞け」
「にゃ?」
 「へ?」と聞こえそうな間抜けな声をもらす白ネコ。
 だが双葉は気にせず愚痴を話し始めた。
「野良猫は大変だな。その日のエサも自分で取らなければ生きていけない。だが飼われてる(ヤツ)よりは自由きままに逞しく生きていて正直尊敬する」
「………」
「私の兄者も自由きままで……お主たちと似ている。尊敬はできんがな」
「………」
「チャランポランで甲斐性もなくだらしのない兄者だ」
「………」
「昨日からフラフラ出かけて帰ってこない。全く、どこをほっつき歩いてるんだか」
「………」
「自由きままは野良猫だけにして欲しいものだな。人間だと迷惑のなにものでもない」
「………」
「……まぁ。私も人の事は言えないけどな」
「にゃ〜?」
 首を傾げる白ネコに双葉は溜息をつきながら『愚痴』を続ける。
「昔、勝手に別れを告げて突き放した。もう会わないつもりだった」
「………」
「なのに私はここにいる。あんなことをしたのに兄者は何も言ってこない」
「………」
「ただ万事屋(あそこ)にいさせてくれる」
「………」
「正直、また兄者と一緒にいられるなんて思いもしなかった」
「………」
「そう、まだ支えられてる。こんな歳になってもな」
「………」
「ああ、ずっと迷惑をかけっぱなしだ。単なるお荷物だよ、私は」
「………」
「わがままで、そのくせ何もできない、どうしようもない妹さ」
「………」
「だから……どうやって恩を返したらいいのか分からないんだ」
「………」
「いつも護られてばかりで」
「………」
「そんな私が兄者に何ができるのか。探してはいるんだが見つからない」
「………」
「お主だったらどうする?」
「………」
「……なんてネコのお主に聞いても仕方ないな」
 双葉は苦笑して白ネコの頭に優しく手をのせた。
「黙って聞いてくれてありがとな。ピザもどきが食べたかったらまた来い。私の愚痴つきだけどな」
 そう言って双葉は白ネコの頭を撫でる。
 くるくるしてる毛の割にはさわり心地がとても良く、何だか懐かしさを感じる。
 できればもっと撫でていたい。しかし耳のないネコが他の仲間を引き連れ戸の前で鳴いている。そろそろ時間のようだ。
「なんだ、もう行くのか。そうだ。兄者に会ったら伝えてくれ。もうすぐ誰かの誕生日だが戻ってこな いなら何もやらん、と。
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