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【銀桜】6.野良猫篇
「誕生日は滅多に言えないことを言える絶好のチャンス」
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[9] 最初
妹に勝手な注文をして先に進んでいく。
 何がなんだか分からず、双葉の頭に疑問符ばかり増える。
 ただ少し前にも今と同じようなことがあったような気がする。
 そう、誰かに頬を軽く叩かれたような……

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――…まさか!

 顔が真っ赤になった双葉は急いで銀時のもとへ走り出した。
「あに――!」「お、きれーな月が出てんな」
 追いかけて事の真相を聞こうとしたが、銀時はふいに立ち止まって夜空を眺めた。
 つられて双葉も夜空を見上げると、美しく輝く月が二人を照らしていた。
「お月見すんのにもってこいだな」
「まだ食べる気か」
「ブラックホールのてめーが言うな」
 皮肉を言い合う兄妹は互いに苦笑する。
 ふと双葉は聞きそこなった疑問を思い出すが、口にするのをやめた。
 ただの思い過ごしだ、と。仮にそうだったとしたら、かなり恥ずかしい。
 そんなバカバカしい考えを捨てて、双葉は兄と一緒に月を眺めた。
 暗闇の世界を静かに照らす夜の太陽を。

――月はいつも闇から護るように人々を照らしている。
――でも私を照らすのは月のように静かな光じゃない。
――もっともっと熱く燃える輝かしい光。
――ああ。私はいつも照らされてばかりだよ……。

 どんな暗闇の中にいても
 いくら陰が差しこもうと
 そのたび心を照らしてくれる光がある。
 それはとても暖かく優しい光。
 けれど――

――……私はいつまで照らされてる気だ?

 ふとそう思う。
 その光が決して消えることはないと信じている。
 だが、ずっと照らされてるわけにもいかない。
 離れなきゃいけない日はいつか来る。
 そう思うようになったのは大分前だが、未だに踏ん切りがつかない。
 とはいえその心構えをするのは、少々気が早いと思う。そんな話が浮かぶ気配すら兄にはないのだから。
 それなら今はまだいいだろうと、双葉はもう少しだけその光のそばにいることを選ぶ。

 彼女の前に常夜の世界を照らす『月』が現れるその日まで。

=終=
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