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藤崎京之介怪異譚
case.3 「歩道橋の女」
I 9.05.pm8:16
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話しになるようで、神父自身も椅子に腰掛けたのだった。
「最初からお話しましょう。あのオルガンは阪田調律師に一任しておりますが、その方がある音大の先生にこのオルガンの話をされたことがあるのです。その先生は興味を持たれたようで、数ヵ月前に一度見えられたことがありました。」
「もしや…宮下教授ですか…?」
 宮下教授とは、俺が大学時代にオルガンの教えを受けた恩師だ。かなり厳しい方だが、反面、家族思いの優しい方でもある。
 俺がバッハを好きになったのは、この宮下教授のお陰なのだ。大学時代は叱られてばかりだったがな…。
「はい、宮下教授です。その教授が、藤崎先生ならば解決出来ると推薦して下さったんですよ。勿論、演奏の腕は確かだと太鼓判を押して頂いたので、先生をこの教会へお招きさせて頂いたのです。」
 無謀と言えるし、なんだか押し付けられた気もするが…。
 俺達は唖然とし、何を言って良いやら分からなかった。
 大体だ、どちらが本当の依頼なんだ?オルガンの謎解きか?それとも演奏なのか?
 こちらが思案に暮れていると、佐藤神父は申し訳なさそうに言ってきた。
「ここで申すのもなんですが、実はもう一つ、依頼があるのです…。」
 …もう何でも言ってくれ。一つと言わず、二つでも三つでも、こうなりゃ自棄だっての!
 横で田邊も呆れ顔で聞いている。
「どうぞ…遠慮はいりませんから…。」
 声のトーンはかなり低くなってしまったのは言うまでもない…。これだから貧乏音楽家は金に縁が無いのかと思う…。
 俺の思いを知ってか知らずか、神父は慌てて言ってきた。
「無論、タダではありませんので心配なさらないで下さい。それと言うのは、この街にある室内管弦楽団の指導と指揮なんですよ。」
 さっきとは裏腹に、俺は目を光らせた。もうランランと星の如くにだ。
 こんな巧い話しは滅多にない。ここで引き下がっては、人生おしまいと言うものだ。
「喜んでお引き受けします!」
「先生っ!?自分の楽団どうするんですかっ!」
 俺が神父の申し出を快諾すると、今まで黙っていた田邊が吠えた。まるでヴォルフだ…。
「分かってるって。しかし神父、曲目は決まってるんですか?」
「いや…、藤崎先生の返答を待ってからにしようかと思いまして。何かご提案でも?」
 俺はある考えてを思い付き、田邊を見てニヤリと笑った。田邊は露骨に眉を潜め、不信感たっぷりの顔をしている。
 それから俺は神父へと視線を戻し、考えた案を提示したのだった。
「マタイ受難曲を演奏しましょう。」
 これには田邊も佐藤神父も驚いていた。
“マタイ受難曲”とは、やっぱりバッハが作曲した宗教作品で、彼の作曲した作品中でも最も大きく、宗教上から見ても最も偉大な作品の一つに数えられている。
 時間にして約二時間半、二つの管
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