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無欠の刃
下忍編
顕現
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 やっとの思いで森林を走り抜けて。追いついた我愛羅のもとには、ナルトはいなかった。
 落胆したように肩を落としたカトナの肩をたたき、サスケは一歩、守る様に体を前に出す。
 生憎と、我愛羅とカトナの間に遮蔽物らしきものは全くないので、自分の身体を遮蔽物代わりにする。カトナはその真意を悟りながらも、あえて拒むようにその背中を両手で押すが、サスケは動こうとはしない。
 今のカトナのコンディションでは、尾獣と対峙することは不可能だと、サスケは長年の経験から気が付いていた。薬により意識とチャクラコントロールが低迷しがち。しかも、ナルトがいないため、いつもの冷静さが欠けている。
 そんなカトナをまるで挑発するように、テマリが声を出した。

 「お前の大事な弟なら、今頃、あいつ…大蛇丸と対峙してるぜ?」

 目を見開き、思わず駆けだそうとしたカトナの腕をサスケが掴むのと、カトナが駆け抜けようとした場所を、砂が一斉に通過するのは同時であった。
 思わず、体を固まらせたカトナを尻目に、放たれた砂は我愛羅の半身を包みだし、顔の半分が獣の形を象る。半尾獣化だと気が付いたカトナは、困ったようにサスケと我愛羅を見比べる。
 尾獣の力は強大で。容易く人を殺せる。父も、母も、彼らに殺された。
 死ぬかもしれない、サスケが。自分を置いて。

 「…」

 震える手でサスケの服を強く握りしめ、声に出せない言葉で小さくつぶやく。
 サスケはそれに何の返事も返さなかったが、それでもよかった。
 現状を理解する思考は一瞬で。けれど積み重ねてきた思いはその程度で覆らない。

「…ここ頼む」
「ああ、任せろ」

 たった一言に対して、サスケはそれしか返さなかった。
 だが、カトナはその一言で満足したように頷く。
 その様子を眺めていたテマリは、馬鹿じゃないのかとカトナを見る。
 半尾獣化した一尾の人柱力である我愛羅だけではなく、テマリもいるのだ。例えチームワークがかけらもなかったとしても、サスケ一人だけでは苦戦するはずだ。
 なのに、まるで当たり前のように任せて。まるで当然のようにそれを受ける。
 信頼関係というにはあまりにも強すぎて。テマリたちにはないその絆が羨ましくて。
 羨むような視線を向けた彼女に気が付かず、カトナは一目散にその場から走り去る。
 それをあえて見逃した我愛羅は、目の前で悠然と立っているサスケを鼻で笑う。

 「…ただの下忍がこの俺に勝てるとでも?」

 笑う我愛羅に、確かに難しそうだなとサスケは相槌を打った。
 それでも、負ける気など微塵もしない。 

 「カトナが、俺に任せたんだぜ?」

 負けたりするわけない。勝てないわけない。
 カトナの信頼を棒に振るような真似なんて行うわけがない。
 サスケ
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