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日向の兎
2部
村人
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うですね、文字通り見つけたからとしか言えませんね」
「冗談はよしてくれ。ずっとこの場所にいたってのか?流石に冗談としては面白くないぞ」
「そうですね〜冗談ですよ〜」
彼女は少し拗ねたようにそう言うと、俺に対してくるりと背を翻し、俺たちの村の方へ足を進めた。一瞬、依頼を拒否されたのかと内心焦りもしたが、どうやらそういう訳ではなく、単純に俺たちの村の方へ行こうとしただけのようだ。
その時、俺は一つ聞き忘れていた事がある事を思い出した。
「あんた、名前は?まだ聞いてなかった筈だよな」
「あーあまり仕事上、名乗りたくはないのですけど。この仕事、忍の里から色々と睨まれていますからね」
「だが、世話になる相手の名前くらい知っておきたいだろ?」
彼女はしばらく考え込むように額に手を当ててから、再び俺の方を向いて懐から取り出した一枚の紙を手渡してきた。それは銀色の兎がデザインされた上品な名刺だった。
「ラビットカンパニー新規事業部門 部長 大筒木 ヒジリ……これがあんたの名前か?」
「ええ、部長と言っても人の殆どいない部門の、ですがね。警備会社というのもあくまで試験運用段階の企画で、発案者の私がこなす羽目になったということです。私としてはオフィスでの書類整理でのしておきたかったんですけどね」
彼女は少しおどけた様子でそう言うと、再び村の方へと足を向けた。既に下調べを終えていたのか、その歩みには一切の迷いがなかった。




「本日は我が社にご依頼頂き、誠にありがとうございます」
ヒジリは村長の家へ着くと、集まっていた村の面々に深々と頭を下げた。村の 面々はヒジリの姿を見て落胆を隠せないというような表情を浮かべたが、彼女はそれを気にする風もなく、笑みを崩さぬままにアタッシュケースから必要な書類などを提示し始めた。
「まず、契約内容の確認ですが、山賊の撃滅で相違ありませんね?」
「ああ……それなんだが、あんたが戦うのか?」
「ええ、なにかご不満が?」
「失礼だが、あんたが戦えるような人間にはとてもじゃないが見えない。何か証拠を見せてくれ」
確かにそれに関しては俺も同感だ。確かに彼女の雰囲気は不思議な物があるが、それでも彼女の姿はどこからどう見て成人前のそれだ。
とてもではないが、荒くれ者の集まりである山賊をどうにかできるようには見えない。スーツ越しではあるが、彼女の体型などはモデルや女優と言われた方がしっくりくるような物に思える。引き締まってはいるが、戦ったりするような体ではない。
だが、俺たちのそんな考えをよそに、彼女はしばらく考える素振りを見せた。そして、何か考えが浮かんだのか一つ頷いて、俺たちを見回した。
「証拠ですか……分かりました」
彼女はアタッシュケースから一枚の紙を取り出した。大きさとしてはA4
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