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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第十六話
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ェリアが街の中心で魔法を発動させれば、花たちがどこへ向かうかは一目瞭然だった。

「しばらく安心して移動できるわね……。まぁ、花がどこかに隠れているか解らないから油断だけはしないように」

 かくして、ナチュルとレイナは再び【ロキ・ファミリア】に助けてもらい、無事に十八階層を脱出することができたのだった。



 十八階層に降りるための連絡路を抜ければすぐに十七階層の大広間に出る。この大広間に来た冒険者が名づけた《嘆きの大壁》の手前あたりに、来たときより圧倒的に少ないものの確かにモンスターが再産出リポップされていた。《嘆きの大壁》は十七階層の迷宮の弧王(モンスターレックス)しか産み落とさないという、間の主が眠る壁のことで、この大広間は階層主が産み落とされるときは他のモンスターは出現しない特性を持つため、まだ階層主が目覚める時は来ないことを示唆していた。

 両手で数えられるくらいの数しかいなかったため─これでも十分な脅威であるが─ナチュルとレイナは問題なく切り抜けた。ナチュルにすでに正体が割れつつあるレイナが【水連】を隠す必要が無くなったため、これまでより圧倒的に屠るのに必要な時間と手間が減ったためだ。
 いとも簡単に瞬殺していくレイナを見てナチュルは若干引きつった笑みを浮かべていた。

 関門を切り抜けた二人を遮れるものなどもう無いため、後は遭遇したモンスターを退けるだけの作業に挿げ替わり、無事に地上へ帰還することが出来た。
 今回は魔石集めによる資金調達ではなく、薙刀を打つための素材を集めるためのものだったため、換金所に寄ることなくバベルを出た。
 空に昇る陽は頂上より少し傾いたところで輝いており、バベルを行きかう人ごみは盛んである。

 ナチュルから発注された冒険者依頼クエストはクリアされ、これで晴れてレイナの肩の荷が下りたわけだが、当の本人の気は重いままだった。

「どこか、二人だけになれる場所はありますか」

 【水連】を隠す必要が無くなった原因を、ナチュルに話すと約束したからだ。レイナが自分の正体を隠さなければならなかった主な理由は、前世の名が六十年以上経った今でも知れ渡っていることだった。古代まで歴史を紐解いても、Lv.10に到達したのはクレア・パールスのみ。両手では数え切れないほど偉業を残した伝説の冒険者は迷宮神聖譚ダンジョン・オラトリアにその名を刻んだのだから、未来永劫語り継がれるのは想像に難くない。
 そんな歴史的偉人が再びこの地に現れた、なんて騒ぎになればオラリオ全土に知れ渡るのに一日も要らないだろう。主神セレーネの謎の失踪の原因をオラリオに駐在する神々だと睨んでいるレイナにとって、その騒ぎは百害あって一利無し、一番忌避するべき展開だ。

 人の口に戸は立てられぬという諺が指し示す通り
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