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藤崎京之介怪異譚
case.1 「廃病院の陰影」
Z 同日 pm1:18
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て、エホバよ、私は歌おう。汝のごとき神は、ほかにはいないのだから。”
 エホバとはキリスト教の唯一の神の名だ。他に「ヤーヴェ」や「ヤハウェ」などの発音もある。そのため、略して「ヤハ」と呼ばれることもある。
 また、有名な「ハレルヤ」という言葉は「ヤハを誉めよ」という意味なのだが、一般的には理解されていないようだ…。
 それはさておき、これ程の細工が施してあるのだ。やはり余程の名工が造ったに違いないが、なぜこの歌詞だったのだろう?
 それは本人に聞くしかないのかも知れないな…。
 俺が光の文字に見いっていると、地下の闇から微かに物音が聞こえたような気がした。それがただの物音なのか、または人の声なのかは判別出来なかったが、確かに何かの音は聞こえてきたのだ。
 俺はそれを確かめるべく、ランプで足下を照らしながら、コンクリートの階段を一段ずつ注意しつつ地下へと進んだ。
 だが、中程まで降りた時、その異変を察知した。
「なんだ…この臭い…?」
 それは生臭く、その中にエタノールの臭いも混じっている。
 その臭いに顔を顰めながらも、俺はその先へと歩みを進めた。
 進めば進むほどその臭いは増していったが、なんとか地下実験室まで辿り着いた。
 その扉を照らすと、ここが臭いの発信源だと言わんばかりに、ベットリとどす黒い血が扉に付着していたのだった。

―帰れっ!!―

 突然、怒鳴り声が響いた。まるで何人もの人達が怒鳴ったような声だったが、なぜか、扉の向こう側から聞こえてきたのだ…。
「終わりの時がきたのだ。人がどれ程愚かであっても、それを裁くのは神であり、お前じゃない!」
 俺は声の主に強い口調で反論し、扉を一気に開け放った。すると、その中から別の臭いが吹き出してきたのだ。
「…死臭…!」
 だが、室内をランプで照らしたが、それらしいものは見当たらない。
 俺は発臭元を探すため、もう一つの光源を取り出した。大型の懐中電灯だ。
 元来、こういう場所と現代機器の相性は悪く、基本的には使いたくない。気休め程度に聖句は書いてあるが、役に立つかどうか…。
 スイッチを入れてみると、そいつはこの闇を見事に払ってくれ、俺は安堵した。これで光源が二つ出来た。
「さて、この臭いはどこから…」
 辺りを見回すと、一ヶ所だけ壁にひどい罅割れがあることに気付いた。
 俺は懐中電灯を持ってその壁を調べたが、どうやら扉を石膏か何かで塗り固めた後のようだった。
 崩れた壁の一部から、白い扉の色が見えていたのだ。
 その罅割れから壁を崩そうと俺が手をかけた瞬間、音を立てて壁が崩れ落ちた。
 俺は突然のことに驚いて一歩後退ったが、何とか気力を取り戻し、その扉に光をあてて見ると…。
「これか…。これが…全ての中心だな…。」
 その扉には番号が書かれ
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