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豹頭王異伝
曙光
闇の司祭
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次元の陥穽を仕掛けおった。
 定期的に施術と投薬の必要な黒太子は儂の加護を喪い、生命の危機が迫っておる。
 既に検診の間隔を過ぎ、肉体の健康を保つ秘薬も皆無の筈じゃ。
 運良く部の民を発見し記憶を読んで引き返す間に、貴重な時間を浪費してしまった。
 太子にもし万一、不測の事態が起こってしまったら何とする心算だ?
 王や賢者気取りの策謀家には到底、対処出来るレベルの事象ではないのだぞ。

 人類の歴史開闢以来の、真に稀有な特異現象であるのだからな。
 自力で何とか出来る等と愚かな考えは抱かず、全てを儂に委ねよ。
 長きに渡り真摯に魔道の研鑽を積み重ね、人類最高の領域に到達し得た叡智の持主。
 偉大なる地上最強の魔道師グラチウス様以外の何人にも、立ち向かう術は無い。
 東方の大国キタイを制圧した異次元の魔道師、パロ聖王宮に巣食う異世界の怪物。
 どちらも豹頭王が退治るは困難、グラチウス様の助力が必要不可欠であるぞよ。

 力を貸してやる故、早急に教えるが良い。
 儂にも読み取れぬは見事と褒めてやるが、スカール太子の居場所を白状せい。
 燃え盛る太陽の如くに生命力旺盛な太子の気が何故か、全く感じられぬ。
 儂の施した黒魔道の術に拠り、太子の身体は暗黒闘気を発しておる。
 他の魔道師ならばいざ知らず、施術主の儂には感知し得る筈なのだが。
 万々が一にも太子が喪われる様な事があれば、とんでもない事になるぞ。

 北の豹と南の鷹に関する伝承が発動されず、大山鳴動して鼠一匹で終わってしまう。
 百万の天球の合に匹敵する伝説の会、世紀の瞬間が生じぬとは許せん。
 無尽蔵の膨大な高次元エネルギー、奇蹟の泉を我が物とする唯一の機会なのじゃ。
 もし王の横車で永久に機会が喪われてしまったら、どうしてくれるのじゃ!
 うぬの操る星々のエネルギーも元を辿れば、かの奇蹟に由来するのであろうが?
 強情我慢の生意気な豹め、白状せい!!」

 スタフォロス城の黒伯爵に匹敵する醜貌、溶け爛れた怪異な生首が吼えた。
 巨大な骸骨が憤激の色、深紅の激情に染まる。
 鉄面皮を貫き聞き流していた長身の偉丈夫は、突如として豹変。
 トパーズ色の瞳に憤怒の炎が湧き、獰猛な牙を剥く。

「貴様にしては珍しくも、自ら腹の底をブチまけてくれたな。
 良いとも、おぬしの正直な物言いに免じて教えてやろう。
 太子は既に古代機械に診察を受け、お前の詐術は完全に見破られておるわ。
 低次元の肉体改造、及び細胞汚染が悪影響を齎し生命の危機に瀕しているとな。
 古代機械の操作に熟達する盟友、アルド・ナリス殿への連絡も済ませた。
 太子は既に《母船》とやらに転送され、治療を受けている筈だ。

 どうした、グラチウス?
 顔色が変わったぞ、生首
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