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豹頭王異伝
薄明
反撃の布石
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 サイロン市街の一角に世捨て人ルカ、白魔道師が居る。
 まじない小路を訪れ、グインの名に於いて協力を要請せよ。
 シルヴィアの錯乱状態を鎮め、昼夜問わず護衛と監視を継続して貰いたい)

 アルド・ナリスは精神接触を通じ直接、グインの体験を《知った》。
 シルヴィアの身を案じる盟友の苦悩を察し、魔道師の急派と常駐警護を提案。
 安否確認を果たした報酬として、古代機械に思念波増幅装置の使用許可を要請。
 <ファイナル・マスター>の命令には逆らえず、銀色の強力な思考が投射された。


 グイン最大の弱点、シルヴィアを護る事は総てに優先する。
 頼りになる部下6名、ディランの戦線離脱は痛いが背に腹は変えられない。
 ヴァレリウスは異を唱えず、七人の魔道師も閉じた空間の術で姿を消す。
 悪夢を統べる女神ヒプノスの名を冠する精神攻撃、呪縛の解除を試みる。

 被術者が自ら精神状態を悪化させ、底無し沼に際限なく沈んでいく魔性の罠。
 昼間の濃霧には催眠効果を助長する触媒、没薬が含まれていた。
 ケイロニア軍、パロ聖騎士団、カラヴィア軍の全員が吸い込だ事は間違いない。
 強力な睡眠薬を吸引した様に、例外なく深い眠りに就いている。
 1人ずつ身体に刺激を与え、夢から目覚めさせるしかない。

 ヴァレリウスは人手を確保する為、ケイロニア軍の警戒担当班を叩き起こした。
 ギールや他の上級魔道師達は問題無く、目覚めた直後に事態を認識するが。
 下級魔道師の大半は夢の回廊、アモンの術で受けた精神的衝撃の為か反応が鈍い。
 中には心此処に在らず、と云った風情で物憂げに首を振る者もいる。
 ディラン率いる魔道師達の到着後に漸く、人海戦術が軌道に乗り始めるが。
 揺り起こされ説明を受ける各部隊の指揮官達も、眼から力が抜けている。


 事態の収拾に追われる最高指揮官、グインの眼前に。
 遙か上空から、黒い物体が落下し地面に激突。
 濃霧の中から現れた巨大な竜と同様、首から上のみ。
 巨大な骸骨が直立、ぱっちりと眼を開き四方八方に視線を走らせる。
 豹頭の追放者を認めた直後、盛大に唾を飛ばし声高に捲し立て始めた。

「何が、パロの王太子アモンだ!
 全ての時空に接するもの、究極の門の守護者じゃないか!?
 何故あんな化け物を儂の様に善良な、か弱い老人が相手にしなければならんのじゃ!
 冗談じゃない、酷い目に遭わされた!!
 許せん、やり直しを要求する!」
「か弱い?
 善良??」
「やかましいっ!
 年寄りの言う事は黙って聞かんか!!」

「泣くな、グラチウス。
 おぬしは世界三大魔道師に名を連ね、ドール教団のみならず黒魔道師を束ねる闇の司祭。
 北の見者ロカンドラスは入寂し、大導師アグリッパは現世
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