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豹頭王異伝
薄明
黒幕の暗躍
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 ベック公ファーンが閉じた空間で護送され、スカールの許を訪れていた頃。
 中原に嵐を呼ぶ男、ゴーラ王イシュトヴァーンは不貞腐っていた。
 意外と迷信深い船乗り、ヴァラキア出身の風雲児は動物的な直感を信頼。
 予知能力者の勘は危険を避けろ、と告げており素直に従う賢明さも持ち合わせている。
 グインの爽やかな弁舌に踊らされ、功名心を煽られた態を装い自軍の天幕に帰営。
 当直を交代した魔道師が数名、災いを運ぶ男の質問攻めに遭遇する事となった。

 ゴーラ王は不運な魔道師達を解放すると、直ちに指揮官達を招集。
 急遽仕入れた魔道の知識を噛み砕き、天性の勘で操り見事な法螺話が披露された。
 イシュトヴァーンの話術は冴え渡り、生半可な魔道の知識を得意の弁舌で補強。
 若き隊長達は素直に感心、転んでも只では起きぬ総帥の見識を褒め称える。
 魔戦士は周囲を煙に巻き意気揚々と引き揚げ、得意満面で運命共同体の天幕を訪れた。

「身体の調子は徐々に良くなっているが、長年の不摂生が祟っている様だ。
 頭脳の回転は元通りだけれど持久力が無い、底無しの体力が羨ましいよ。
 そなたの気力と回復力を分けて欲しいものだが、黒魔道に類する術は禁忌だからね。
 白魔道は生憎な事に制約が多くてね、そんな便利な術は使うと魔道十二条に触れてしまう。
 黒魔道は夜と闇に親しい反面、白昼と陽光の下では威力が減衰するから昼間は宜しく頼む。
 不寝番を務める為には充分な昼寝が必要だ、申し訳無いが熟睡させて欲しいな」

 アルド・ナリスは優雅に微笑み、『数ザンの間は面会を謝絶する』と言外に表明。
 ヴァレリウス、当直を務める上級魔道師ロルカ、下級魔道師5名が念波を統合。
 閉じた空間を経由して姿を消したが、ゴーラ軍の中に察知した者は無かった。

 グインは魔道師の助言に従い警戒を徹底させ、各部隊の鎮静化を図るが。
 日没前に進軍を再開する事は出来ず、湖畔の森で野営を余儀無くされた。
 黒魔道の威力が倍増する夜間の奇襲を警戒、盛大に篝火を焚き歩哨の数も増やす。
 上級魔道師ギールを通じ、ケイロニア軍の陣中で遠隔心話を受信。
 人払いを命じた天幕の内部に闇が揺らめき、閉じた空間から複数の影が現れた。

「スカールは闇の司祭グラチウスが施した黒魔道、未知の病に冒され命旦夕に迫っていますが。
 ファーンの説得が功を奏し、古代機械の治療を受け容れる事となった模様です」
 曲がりくねった世辞の遣取り、韜晦は省略し単刀直入に要件を切り出す稀代の策謀家。
 ヴァレリウスが頭を振り『何時も、こうすれば良いのに!』と無言で雄弁に表明。
 【笑】の感情記号を映した猫族の瞳が煌き、パロ解放軍の最高指導者も眸を綻ばせる。

「アルゴスの黒太子スカール殿か、俺も彼とは
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