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豹頭王異伝
薄明
黒幕の暗躍
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何れ対面したいものと思っている。
 トーラスでカメロン殿と対面し彼に関する話を聞いて以来、一層その思いは強まった。
 ヴァレリウスが大導師アグリッパを探し当てた際、聞いたそうだが。
 ナリス殿と俺と太子が揃った時、果たして如何なる力の場が生じるのか大いに興味があるな。

 世捨て人のルカは何れ、俺は世界三大魔道師全てと会うだろうと言ってくれた。
 3千年生きたと云う大導師アグリッパには俺も直接、対面して色々と聞いてみたい事がある。
 キタイ解放の為には、ヤンダル・ゾックに対抗出来ぬ力の場を欠く訳には行かぬ。
 スカール殿は御救いせねばならんが、どうしたものかな。
 古代機械に命じてみたが、治療方法の決定には《マスター》の立会が必要であるらしい。
 俺は部下共の傍らを離れられぬ故、ナリス殿に御頼みしたい。

 おや?
 如何されたのかな。
 何故か何処となく心気が優れぬ様にお見受けするが、身体の調子が思わしくないのかな。
 古代機械から治療は順調と連絡を受けているが、何事か不具合が生じたのであろうか?」

 円形に近い瞳孔が大部分を占める猫族の丸い瞳、トパーズ色の虹彩に不審気な光が宿る。
 ナリスは先日の不愉快な記憶を蘇らせ、忌々し気に肩を竦めた。
「どうぞ、お気に為さらずに。
 お気に入りの玩具を独り占め出来なくて、拗ねているだけですから」

 ヴァレリウスは表情を変えぬが、一瞬キラリと輝いた炯眼が内心を物語る。
 長い睫毛に縁取られた瞼が瞬き、豹の眼に閃いた同質の光と煌きを糊塗。
 騎士団長の役を押し付けられたトールが見たら、蹴とばしたくなるかもしれぬ独特な豹の面。
 悪戯っ子の貌が透けて見える鉄面皮の男、芸達者な花形役者が重々しく口を開いた。

「それは困った、如何したものかな。
 ナリス殿を究極の主人、《ファイナル・マスター》に認定させる事は出来るかな。
 ケイロニア王グインは入室の最低条件、パロの民に非ず降格し権限を剥奪する。
 今後は俺の命令を聞いてはならぬ、と命令すれば良かろうか?」
 トパーズ色の瞳に笑みを湛え、大真面目に応える豹頭の戦士。
 憮然とした面持ちの貴公子、ナリスも流石に堪え切れず輝く様な笑みを浮かべた。

「貴方が大真面目な貌で冗談を言うと、笑いの発作で息が詰まりそうですよ!
 其の御髭を、抜いてしまいたくなりますね!!」
 咽返る程に心の底からの笑いを披露しつつ、冗句を捻り出し反撃を繰り出す闇と炎の王子。
 世界の命運を握る者雄の道化芝居に、苦労人の魔道師も思わず眼を細めた。

「未だ試した事は無いが、簡単に抜けるのかな。
 ナリス殿に髭を抜かれたら、痛くて泣いてしまうかもしれんな」
 悪戯好きな猫族の笑顔を見せ、余裕で応えてみせる豹頭の超戦士。

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