其処で繋いだ友達のカタチ
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初めての戦、初めてのヒトゴロシ、初めての喪失、初めての乱世……。
数か月かけた戦いは俺にとって初めての連続で、もう普通の人には戻れないんだなとつくづく思う。
「いやぁ……元から人じゃなかったっけか」
苦笑が出た。
死んであの腹黒にナニカサレた俺は元々普通じゃあなかったのだ。自分が人間だと考えることこそ愚かしいにも程がある。
悲観することは無かったが幾多のもしもだって考えてみた。
例えば、生きてた頃によくあった小説なんかの転生とか。それなら努力して力を得て、自分の為に戦って、そこそこの人生を生きようなんて思ってたんじゃないかな。
例えば、世界を変えろなんて命じられず、武力も与えられず、この世界に生きたまま飛んで来ただけとか。それなら皆を守る為にと必死で自分に出来ることを探せたと思う。
例えば……例えば……そうして積み上げる思考は無駄に過ぎるけど、なんとなく考えてしまうモノだ。
バシャ、と湯を掬って顔に掛ける。こんなゆっくりと風呂に入るのは久しぶりだったから、変な所に思考が向きやすい。切り替えよう。
ふと見ると、傷だらけの身体の中で、今回の戦で受けた傷が目立っていた。何処か安堵するのは、きっと自分が戦った証だからだと思う。
最近は腕とかの傷を隠すことを止めた。長袖で出来る限り見せないようにしてたけど、楽進が隠してもいないのに俺が隠してどうすると思ったのだ。自分が受けた傷じゃなかった、という事に抵抗があったのは大きいけど、今思えばバカらしい。
傷は男の勲章だ。隠してどうする、本当にバカらしい。か弱い乙女じゃあるまいし。むしろこの傷を見せた方が俺に足りないもんを得られるって気付けたんだ。
この身体に刻まれた歴史は人が生きた証明。黒麒麟は確かに此処に居て、黒麒麟と戦った奴等も付き従った奴等も此処に居る。一つ一つの傷に、誰かの熱が宿っているのだ。
そう思うと……じわりと胸に熱さが灯る。記憶を失って感覚のズレている俺でも刻まれた証明を目にすることで、言い表せないナニカを感じられた。
「黒麒麟はこうして想いを背負ってきたんだろうなぁ……」
予想しか出来ないがそんな気がする。あの子から聞いた初めての戦場で味方も敵も救いたいと願ったその男は、常に先頭を切りたがったという。
軍師のいうことは聞いても、突撃する時は俺について来いと必ず言っていたんだ。
待つ事が苦手なのは救いたい渇望のせい。そんな時、どれだけ心逸るのか。味方が死ぬのが嫌で、敵でさえ殺したくないなんて……あんな大きな想いを抱えながら戦ってたら壊れるに決まってるだろうに。
「敵も味方も例外なく人……か。当たり前のことなのに、そう考えないのが戦。度し難いなぁ」
「小難しいこと考えたって答えなんざ出ぇへんでー?」
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