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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第二七話 幻想を真実に
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 マホガニー製の執務机の卓上に緑茶の入った湯呑がトン、と軽い音を立てながら置かれる。
 その湯気の上で暖かな微笑みを二人は交わすのだった。

 幻想がほんの僅かに厚みを増し、真実に近づいた気がした―――――。






「なぁ唯依。」
「はい、なんですか?」

 不意の呼びかけに小首を傾げる山吹の娘、唯依。その何気ない仕草に絆されるのはどうにも本格的に脳をやられている証拠に思えて仕方がない。
 が、そんな小っ恥ずかしい事を口に出来るわけも無く、その思考を隅に追いやると兼ねてから抱いていた疑問を口にする。

「お前は確か京都出身だったよな?」
「ええ、そうですけどそれがどうかしたんですか?」

「……なんで訛ってないんだ?。」
「えっと……そういう学校と家庭でしたから、としか……」

 そう云えばお嬢様学校出身だったなとふと思い出す。
 また、最近の若い層は方言を使わない比率が高くなっていると言われていたが、唯依が方言を使わないのは唯依の母が京都出身ではない事の方が大きい様な気がする。


「―――もし、何かが変わっていたら京言葉のお前と出逢っていたかもしれないな。」
「ちょっと想像出来ませんね。」

 IFを語る自分にちょっと困り気に苦笑する唯依。不意に好奇心というか悪戯心というかそういう類のものが胸裏で鎌首を擡げた。

「ちょっと言ってみてくれ。」
「え、今ですか?」

「ああ、」
「えっと、行き成り言われても……何を言ったらいいのか……」

 しどろもどろになる唯依に口元がにやけそうになるが、それを渾身の気迫で抑え込む。

「そう身構えるな、何でもいい。……それとも俺がお題目でも決めようか?ここは定番に愛の告白でも。」
「え……ええ〜〜〜!」

 皮肉気な笑みを伴って発したその言葉にきょとんとそのぱっちりとした目を瞠目させる唯依が数旬遅れて叫びを上げた。

 その普段の凛と張りつめた彼女からは想像が出来ない狼狽えぶりが―――あまりに可笑しくて。


「――ぷ、くくくくははは………ハハハハハハっ!!!」
「も、もう!からかわないでください!!」

「くくく……す、すま―――やっぱ無理!ははははっ!!!」


 頬を膨らませて抗議する唯依だが、一度ツボってしまった笑いのツボにより笑は止められない―――あまりに可笑しくて懐かしくて…胸が締め付けられる。


「うう〜〜〜じゃあ!忠亮さんだって土佐弁使って下さい!!」
「ほんまにえいがか?県を跨いだだけで分からんちゅう事がしょっちゅう有るがぞ?(本当にいいのか?県を跨いだだけで分からんという事が結構あるぞ?)」

「―――行き成り真顔で…というか坂本龍馬みたいにぜよじゃないんですか?」
「土佐
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