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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第二七話 幻想を真実に
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よ。お前はイルカやクジラに知性があるからと同列に扱えという口か?それは平等ではない単に無分別なだけだ。
 幻想と呼ぶのも烏滸がましい妄想に過ぎん……そもそも、人間同士が真に分かり合うなんてことない。分かり合えた気になることはあってもな。」
「―――それは冷たい言い方だと思います。
 だって、それなら……私と忠亮さんは分かり合っていない、分かり合っている気になっているだけという事になってしまいます。」

 胸元で手を握り締めて唯依が絞り出すように言う。
 だが、本心では分かっているのだ。亮のいう事はどんなに冷たくても真実であると。

 でも、それを受け入れてしまっては、彼に愛され愛したそれが幻想に過ぎないというのを認めてしまうことになってしまう……それはとても嫌だ。


「そうだ、己たちは分かり合っている気になっているだけだ。―――だから、その気になっているだけに過ぎないという自覚を持たなければならない。
 俺たちは幻想にはなれない。どんなに辛くても今を、現実を生きるしか無いんだ。それがどんなに寂しくて悲しくても……いや、だからこそ、それを直視しなければ成らない。
 ――己はお前じゃない、お前も己じゃない。だから分かり合うための歩みを止めてはいけないんだ……その、己たちは夫婦(めおと)になるんだから。」


 少し照れくさそうに最後に付け足す忠亮。
 その言葉に気づかされる―――自分は、恋をした。そのため盲目になり慢心していたのだと……彼は幻想に逃げず真剣に自分とのこれからを考えてくれていた。

 明鏡止水、それを自然体で成すのはおそらく彼が求道的な性質を持つからだろう。
 甘えや楽観を否定し、現実を直視しながらも幻想を真実に変えることを求め続ける。
 それに敵なら単に関係を絶てばいいが、夫婦はそうはいかない。

 一生をともに歩んでゆくのだ―――だからこそ分かり合っている。という幻想に浸ってはいけないのだ。言葉に、行動にしなければ伝わらない。
 だから告げる、幻想に浸らないように、幻想を真実に変えるために。

 幻想に浸らず、刹那を真摯に見据え大事にし積み重ねていくことできっと―――幻想は真実に変わる。

「―――そうですね。私たち夫婦(めおと)になるんですから……!」

 さすがに照れくさく、唯依がその急須から注がれた茶のように湯気をあげながら自分でも口にする。
 幻想の愛が、真実の愛に変わる……中々に臭いセリフだが、どうにも悪くないと思えてしまう……それはそれで幻想的(ロマンチック)だ。

 ―――なら、今は幻想の愛を真実の愛に変える過程を楽しむのも悪くはないかもしれない。


「自分で言って自分で照れるな。」
「忠亮さんだって。」

「………ふっ」
「ふふ……」



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