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科学と魔術の輪廻転生
先生。
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持っている奴、だったなんてね。

 ははっ。
 そう言えば、前世もそんな感じだったかもな。
 小学校高学年の頃、登校中に目の前に重そうな荷物持った老人がいたら、遅刻しかけてでも助けたことがあったっけ。
 それでも、なんとか間に合った。
 そんな記憶が、ある。

 そうだよ。
 俺は、お人好しだ。
 物凄いバカな、お人好しだ。
 でも、それの、何が悪いんだ?

「話を戻します。
 僕は先程、アイリ先生が覚悟をしていた、と言いました。
 覚悟。
 つまり彼女は、あのことを後悔しているんですよ。
 反省しているんです。
 反省しているから、そんな、強い決意ができる。
 そう、僕は思いました。
 そして本来、罰というのは、二度とそれをやってはいけない、と戒めるためにあるような物です。
 なら、彼女に罰は必要ないんじゃ無いでしょうか。
 彼女は、罰を受ける必要は、無いのでは……」

「アル君!」

 突然、アイリ先生の声が俺を遮る。
 思わず言葉を止めてしまった。
 彼女は言う。

「……私は、アル君に賛同することは出来ません。
 私は、弱い人間なのです。
 罰を受け、自身を叱らなければ、何度も同じ過ちを繰り返してしまうような、甘い人間なのです。
 なので、私はアル君の提案に乗っかることは出来ません。
 ……私は、近日中に出て行きますので。
 さようなら」

 そう言って、彼女は椅子から立ち上がり、スタスタと扉に向かって行く。
 だが、その歩みには、少しの迷いが見えた。
 しかし、俺は何のアクションも示さなかった。
 まるで何も起きなかったかのように、話を継続し始めたのだ。

「と、今までのは全て建前です。
 本音ではありません」

 アイリ先生の足が扉の前でピタリと止まる。
 既に扉は開け放たれ、いつでもその一歩を踏み出せるのに、彼女の足は鉛のように動かない。
 俺は続ける。

「本当は、アイリ先生のことが好きなんです。
 大好きです。
 僕は、ただ単純に、貴女を助けたいんです。
 ただその一心で、ここまで詭弁を並べて来たんです」

 いい歳になってこんなことを口走るのは結構恥ずかしいが、本当のことだ。
 親愛、的な感じだ。
 なんというか、昨日会ったばかりなのに、家族みたいな気がしたのだ。
 何故なのかは分からない。
 しかし、俺の口は止まらなかった。
 アイリ先生は黙ったまま俯いていた。

「はい。
 僕がアイリ先生に言いたいのは本当にそれだけです。
 ですから父さん」

 俺は父さんの方を向き直った。

「お願いします。
 アイリ先生を、解雇しないでください。
 どうしてもダメだと言うのならば、僕が弁償します。
 アイリ先
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