暁 〜小説投稿サイト〜
科学と魔術の輪廻転生
早速プロブレム。
[3/3]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
解雇も、辞さないと思っています」

 そこで、彼女は視線を落とした。
 テーブルの上に一つ、影が出来た。

「……お願いします。
 どうか、私を解雇してください。
 解雇されれば、私は速やかにこの村を去ろうと考えています。
 もちろん、倉庫、そして中にあった日常用品の類も、全て弁償しますので。
 昨日今日で出て行く形にはなってしまいましたが、今まで迷惑をお掛けしました。
 そして、この度は……」

 彼女は顔を上げ、ラインの方に向き直った。

「本当に、申し訳ございませんでした」

 そんな様子を見て、俺の心は疼いた。
 アイリ先生に、出て行って欲しくないのだ。
 だが、その思いはアイリ先生の瞳を見た途端、喉の奥で押し潰された。

 覚悟。
 彼女は、覚悟をしていた。
 どんな判決が下されても、それを文句一つ言わずに受け入れる、その覚悟が。
 その瞳に、俺の安易な思いが立ち入る隙は無かった。
 そう。
 ここで何もお咎めなしで終わったとしても、彼女自身が納得しないのだ。
 彼女は、自分がそれ程までのことを仕出かしたと分かっている。
 罪悪感は、裁かれることでしか解消することは出来ない。
 例え俺が彼女を庇ったとしても、結果は変わらない。
 そんな気がした。

 俺は、迷っていた。
 自分の気持ちを、正直に言うべきか、否かを。
 だがそうした所で、果たしてアイリ先生は納得してくれるのだろうか。

 分からない。

 俺は、迷っていた。

 アイリ先生の言葉の後、客間には静寂が訪れていた。
 父さんも、母さんも、何も言わない。
 何も言わず、ただただそこに鎮座していた。
 その顔色は俺には、ひたすらに重く見えた。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ